GATUN! SPECIAL DISCUSSION けんせつ小町たちのけんせつ小話。 2/4

お客様と苦楽をともにしながら
つくりあげていく喜び。

大下:このカフェは古い物件をリノベーションしたものです。以前は何に使われていた建物だと思いますか?

北島:ガレージや倉庫をカフェやショップにリノベーションするのはよく聞きますが…う~ん。何かの工場でしょうか?

大下:北島さん、さすが建築学科! するどいですね。実はここは以前、カバン工場だったんですよ。

山本:工場がこんなにおしゃれなカフェになっているなんて、信じられません!

大下:ありがとうございます(笑)。店内をよく見てください。実はいろんな場所にカバン工場の名残があるんです。たとえば、この白い壁や天井、換気扇などは新しくせずにそのまま使っています。古いものでも使えるものやステキなものは残しながら空間をつくりあげていきました。工場時代に使っていたカバン用のミシンなど、今はもう手に入らない貴重なものが店内にはいっぱいあるんですよ。

北島:入口の扉や床にも独特の風合いがありますね。これも工場の頃のままですか?

大下:床と壁は新しくしましたが、お店全体の雰囲気とマッチするように古く見える加工を施しています。いわゆるエイジングです。

三好:おしゃれなカフェと工場のアンティークな雰囲気が合わさったステキな空間ですね。なぜ、このようなデザインにしようと思ったのですか?

大下:お店の店舗デザインに携わる中で、大切にしていたことは「オーナーさんと一緒につくる」ことです。たとえば、壁はそのまま使いますか? ダクトはむき出しにしますか? カウンターはどうしますか? など一つひとつ打ち合わせを重ねながら二人三脚でつくりあげていきました。それから、通常、テーブルやイスなどの家具は私が選ばせてもらっていますが、こちらのお店ではオーナーさん自ら探されたものを置かれています。

北島:オーナーさんと大下さんの思いがいっぱいつまっているカフェなんですね!

大下:実は壁のイラストはオーナーさんの作品なんですよ。

山本:かわいいイラストですね~!

三好 知絵 [土木工学科 2年 大阪府立泉北高等学校 出身] 土木系学科の数少ない女子学生。「人の役に立つ仕事に就きたい」という想いを胸に土木の道へ。卒業後は橋梁設計を手がける会社に設計士として勤務することが決定し、夢に向かい着実に前進している。

お店自慢の自家焙煎コーヒーをいただきながら、お話しを伺った。

三好:建築士やデザイナーさんには、どことなくアーティスト的なイメージがありましたが、お客様のことをきちんと考えながら、建物をつくっていくんですね。

大下:自分本位で設計やデザインを提案するのではなく、オーナーさんに納得していただき、お店がこの先、何年、何十年も人々に愛されることが一番大切ですからね。他にも、まだまだこだわりがありますよ。たとえば、このメニューボードは、うちの会社のスタッフお手製です。専門の業者さんに依頼すると、もちろんキレイにはできますが、こういったすすけた味は出ません。やっぱり、手作りはいいものです。

三好:そういった細かいこだわりが空間をステキに演出しているんですね。

大下:そうです。細部にまで目を配ることが良いものを生み出すための秘訣ですよ。でも、私たちのこだわりはそれだけじゃないんです。実は、お店のロゴマークもグラフィックデザイン担当のスタッフが制作しました。

北島:ロゴマークの制作も請け負っている設計事務所って珍しいですよね?

大下:他には聞いたことがありませんね。私はお客様とより深く関わりたいという気持ちが強いため、ロゴマークの他に、屋号やホームページ、さらには、ノベルティグッズの制作なども行うスタイルで仕事をしています。その分、業務の幅がひろく一筋縄で行くものではありませんが、お客様と一緒に店づくりをできるのが楽しいですね。さらに、工事が終了した後も、何か悩みやご要望があれば相談に乗り、一緒に考え、お客様により近いスタンスで末永くお付き合いさせてもらっています。