Creator's File 河原一級建築設計事務所 河原 和也の仕事

河原一級建築設計事務所 河原和也 Kazuya Kawahara

1980年兵庫県生まれ。2002年総合建築学科(現:建築学科)卒業。姫路市内の設計事務所に勤めた後、2006年に実父が経営する河原一級建築設計事務所へ。地元の商工会・建築士会などの青年部に所属して精力的に活動するかたわら、資格学校で建築士試験受験者へのアドバイザーも担当。一級建築士。

お客さまの要望は全部受け入れる。それがプロの建築士。

一級建築士として、父が経営する設計事務所で一緒に仕事をしています。最近は建築確認申請や許可申請が多くなっていますが、もちろん個人のお客さまと契約して新築設計をするほか、ハウスメーカーさんからの仕事や、大工さんが持ち込んできた仕事の図面を描くこともあります。過去には、小学校の体育館や公民館などの設計も手がけました。建築士の仕事は、建築基準法や都市計画法など専門性の高い法律に関わるものでもあるので、最近はこの経験を生かして資格学校で建築士試験を受ける人たちへのアドバイザーもしています。仕事においては、まず「お客さまの気持ちになって」というのが絶対。自分はプロの建築士であるといつも言い聞かせ、お客さまのご要望はすべて受け入れます。そのうえで、自分のカラーを融合させていい建物を考えたいという思いで取り組んでいますね。お客さまのご要望にただ流されたり、あるいはそれを叶えられなかったりするのはプロではないと思います。難しいところですが、それは常に心がけています。


勉強とものづくりの楽しさを知った修成での学生時代。

この仕事をめざしたのは、父の影響が一番大きいです。私は野球の推薦で高校に進学するほどの野球少年で、甲子園まであと一歩というぐらい打ち込んでいました。しかし高校卒業後の進路を考えたとき、やっぱり建築だなと思ったんです。幼い頃から父が仕事をする姿を見ていて、自然に好きになっていたのでしょうね。それで、建築を学ぶなら修成がいいと父がすすめてくれたのです。入学後は、同級生がなかなか理解できないことが私にはスッと理解できました。部材の名前ひとつとっても、聞き慣れていたからなのかすぐに覚えられる。それまで特に建築を学んだことはなかったのに、図面も感覚的にわかるんです。みんなの前を走っている感覚が気持ちよくて(笑)、勉強するのが楽しかったですね。工事現場や解体現場で足を止めるようになるなど街の見方も変わりましたし、課外で木工を学ぶクラブ「木匠塾」を立ち上げ、木の特性を学んだり、切れ端でものづくりをしたり、毎日「建築」や「ものづくり」にふれていました。野球漬けで勉強とは縁遠かった私が一級建築士になれたのは、修成で学ぶ土台を築けたからだと思います。


若い頃の苦しさ、悔しさ、喜びがいまの自分の糧になっている。

修成を卒業した後、数年間は別の会社で働いていました。社員10名ほどの会社で、小学校の体育館、公民館、幼稚園、学校の耐震改修など公共物件の設計打合せから現場監理まで、建築士ができる花形業務をさせていただきました。まだ入社2、3年の私がまるまる1軒の設計を任され、徹夜が続くこともしばしば。しかし若いからこその修練だと考え、先輩方に助けていただきながらやり遂げました。このような設計中の試行錯誤に加え、工事が始まっても現場の収まりや工程・品種の監理が難しく、逃げ出したくなるような日々を送ったこともあります。当時は知識もスキルも豊富ではなかったので、お客さまの難しい要望を受け入れたくてもできず、無難なプランや仕上げになってしまうという悔しい思いもたくさんしてきました。それでも工事が終わり、竣工式を迎えたときは涙が出るほどの喜びなんです。今でも携わった物件の前を通ると、そのときの思い出が蘇りますね。この時期が私の経験値をあげてくれましたし、竣工の喜びを知ったからこそ苦しくても辞めたいとは思わなかったのだと思います。


街に開かれた事務所を実現し、自らの理想も形にしていきたい。

私は40歳を一つの区切りにして、キャリアプランを描いています。現在、父から事業を継承する前に見識を広げておこうと商工会など地域のさまざまな団体に所属しているのですが、青年部にいられるのは40歳まで。そのときには父も70歳目前となるので、そのタイミングで事務所を継ぎたいと思っています。私の代でやりたいことは大きく2つ。まずは事務所の方向性として、現在も大きなウエートを占めている建築確認申請や許可申請の業務を継続していくとともに、専門的な法律の知識を生かして家に関する相談を何でも受けるような、地域に開かれた場所にすること。設計事務所はまだまだ近寄りがたいイメージがあると思うので、それを取り払いたいです。もうひとつが、河原和也という一人の建築士としての理想を実現すること。それは、木造建築のよさを見直し、自然素材で呼吸する建物を考えていくことです。現在も、地元である兵庫県たつの市や御津町などに残る古い街並みを見学したり、古民家の設計・施工を勉強したりと具体的に活動しています。また、日本の伝統的な文化である華道と茶道にも挑戦し、木造建築にそのエッセンスを生かしたいと考えています。まずは、自分の家を建てるときに実践したいですね(笑)。育った街で建築士として活動しているわけですから、街のよさを生かしながら街並みを魅力的に変えていきたいという思いもあります。
商工会など地域の団体では他業種のプロと出会い、考え方や、仕事に対する姿勢など多くの刺激を受けています。私も40歳までに自分のスタイルを確立できるように、多くの人と出会い、いろいろなことを模索し、貪欲に視野を広げていきたいですね。まだまだ、これからです。

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