Creator's File 一級建築士事務所 Via BARTOLO34 塩見 英之・京子の仕事

一級建築士事務所 Via BARTOLO34 塩見 英之 Hideyuki Shiomi

1996年建築工学科(現:建築学科)卒業。設計事務所で経験を積んだ後、2年間のイタリア留学へ。2006年帰国後、妻の京子とともに設計事務所「Via BARTOLO34」を設立。現在、「長く愛される建物の設計」をモットーに、戸建住宅やマンション、公共施設、工場など幅広い建物を手がけている。
一級建築士。

一級建築士事務所 Via BARTOLO34 塩見 京子 Kyoko Shiomi

1996年女子建築設計科(現:建築CGデザイン学科)を卒業後、設計事務所に勤務。公共施設を中心に、数多くの設計に携わる。後の夫となる英之とイタリア留学を経験。「Via BARTOLO34」設立後は、女性ならではの柔軟な視点から、アイデア性に富んだ多彩な設計を世に送り出している。
一級建築士。

お客さまを深く知ることが優れた設計を生み出す鍵となる。

英之 妻と二人で設計事務所を営んでいて、戸建住宅やマンション、公共施設など、さまざまな建物の設計を手がけています。私たちがどの案件でも大切にしていることは、お客さまとじっくりコミュニケーションを取りながら設計を練ること。とくに戸建住宅の場合は、何度も話し合いの場を設けて、お客さまのライフスタイルを深く理解することを心がけています。そうすることで、自分たちの設計がご要望にマッチしていき、何十年も住みよく愛される住宅が完成するのです。住む人のことをよりよく知ることこそが、ご満足いただける設計を生み出す鍵になると思っています。
京子 私たちは竣工後のアフターケアも同様に大切にしています。数年に一度、住んでみて不具合はないか、実際に足を運んで確認します。毎回ドキドキしながら訪問していますが、自分たちが設計した住宅で幸せな毎日を送られている姿を見ることは、建築士として喜びを感じる瞬間のひとつです。建築士としてだけではなく、長くお付き合いできる暮らしのパートナーのような存在になれればうれしいですね。


お互いにないものを補い合う持ちつ持たれつの関係。

英之 夫婦で設計事務所をはじめたのは、「夫も妻も一級建築士なんだから、やるしかない」という単純な発想からでした。実際にはじめてみると、夫婦ならではの良さがたくさんあります。最もメリットに感じていることは、二人の長所を活かした設計を提案できること。私の長所は理にかなった実現性の高い設計を生み出せることです。一方で妻は、柔軟な発想でアイデア性に富んだ設計を生み出せます。タイプの異なる建築士が共同で設計にとりかかると、意見がぶつかることが多いのですが、夫婦だとお互いの良い部分を分かり合っているので、おのずと長所を引き出し合えます。そして、私の論理性と妻の柔軟性がひとつになって、質の高い設計が生まれるのです。
京子 私にないものを夫が補ってくれて、夫にないものを私が補う。この持ちつ持たれつの関係こそが、設計事務所を営むうえで最高の環境を育んでくれます。夫は温厚な人なので、突飛な設計でも気がねなく提案できる、ということもありますが(笑)。
英之 もちろん、お互いプロなので意見がわかれることはあります。しかし、ぶつかりあっても決して仕事をプライベートに持ち込まないこと。シビアな雰囲気になっても、家では楽しく家族団らんを過ごす。これは、夫婦で仕事をするうえで大切なことですね。
京子 私たちがこうして、毎日幸せに仕事ができているのは、建築士としてだけでなく、ひとりの人間としてお互いを尊敬し合えているからだと思います。これも夫婦ならではの良さではないでしょうか。


イタリアで学んだことは長く愛される建物をつくる精神。

京子 設計事務所を設立する前は、二人で2年間ほどイタリアに住んでいました。イタリアに住もうと思ったのは、建築を勉強するのはもちろんのこと、イタリアに住む人たちの自由奔放な暮らしぶりに魅力を感じたからです。「いいかげん」と言えばいいかげんですが、それでも社会はちゃんと回っていて、みなさん幸せに暮らしているところが魅力ですね。
英之 イタリアでは建築士として学ぶことがたくさんありました。その中で最も感銘を受けたことは、イタリアでは古い建物ほど価値があり、大切にされているということです。ミラノやフィレンツェといった大都市でも、築何百年という建物がたくさん残っていて、実際、私たちが住んでいたアパートは築400年を超えるもので、当然、最新の設備が搭載されているわけではありませんでしたが、石造りで断熱性が高く、四季を通して快適に暮らせました。このような、良いものをつくり長く大切にするイタリアの精神は、私たちの「ずっと愛される建物をつくる」という使命につながっています。
京子 イタリアの建物を日本で実現することは簡単ではありませんが、設計に取り入れることはあります。たとえば、最近手がけた住宅では、トイレ、洗面台を同じ部屋に設置することを提案しました。サニタリー類を同じ部屋に設置することで、その分部屋を広く使えて、ご高齢の方にとって安全に使えます。このような長年安全にお住まいいただける設計が日本でも定着していけばうれしいですね。


暮らしの中から得たヒントを糧に二人三脚で成長していきたい。

京子 現在、「子育て支援」をテーマにしたマンションの設計に携わっています。この設計の肝となるのが、自転車を降りずにそのままエレベーターで玄関まで行ける、というもの。小さなお子さまを自転車に乗せながらスーパーの袋を抱えて帰ってくるお母さんにとっては、うれしい機能になると思い提案しました。この設計は、現在2歳児の子育て真っ最中の私たちだからこそ発想できたもので、日々の暮らしの中で、こうだったらいいなと思ったことをカタチにしました。今後は、子育ての中で出会ったことをヒントに、子育て支援に関わる設計に挑戦していきたいと思っています。
英之 このように自分たちの暮らしの中から得た気づきを、これまでになかった機能として取り入れていくことも、建築士としてあるべき姿だと思います。日常の中に転がるヒントを取り入れ、新たな暮らしを生み出す。建築士とは、ただ建物を建てるだけでなく、快適で幸せな毎日を提供できる職業です。このやりがいのある仕事をこれからも続けていくために、いろいろなお客さまと出会いながら、暮らしの中からどんどん良いことを吸収し、夫婦二人三脚で成長していきたいですね。

Bonus Talk

学生時代は修成のどこに魅力を感じていましたか?

英之 建築士としてバリバリ活躍している先生から、直接学べるところが魅力でしたね。先生だけど先生じゃないみたいな、良い意味で変わっている方が多くて刺激的な毎日でした。
京子 現在、学生時代に教わった先生とお仕事をさせてもらっています。建築士になって、一緒に仕事をすることも先生方にできる恩返しのひとつだと思いますね。

二人のなれ初めについてお聞かせください。

英之 「建築クラブ」という、いろいろな建物を観に行ったり、建築について語り合ったりするクラブがあって、そこで知り合いました。その頃はただの同級生でした(笑)。
京子 同級生だった夫と、同じ道に進み、結婚し、一緒に設計事務所を営んでいることを思うと、修成に入学したことが人生のターニングポイントだったと、つくづく思いますね。


GATUNのTOPに戻る