Creator's File 一級建築士 髙木 覚の仕事

一級建築士 髙木 覚 Satoru Takagi

1962年、兵庫県生まれ。高校普通科を卒業し、(有)創建構造企画(現:(株)創建構造企画)で業務をこなす傍ら、1990年に修成建設専門学校第2本科建築工学科(現:建築学科)卒業。主に西日本において構造体施工設計にあたり、高度・速度・落差・全長の4項目でギネスブックに登録された(いずれも営業開始当時)三重県・ナガシマスパーランドのジェットコースター「スチールドラゴン2000」、2002年にサッカーW杯が開催されたウイングスタジアム神戸(現:ホームズスタジアム神戸)、JR大阪駅北側でのいわゆる「大阪北ヤード」開発など、これまで数々の有名建築物を手がけている。現在専務取締役、設計部門のトップとして後進の育成にもあたる。
一級建築士。

建築物の根幹を支える、構造体施工設計という仕事。

私の仕事は、建築物の設計図をもとに、建物の骨組みである鋼構造物の施工図を描くことです。実は、建築物というのは建築家が描いた原設計図だけでは建てることができません。実際の工事で製品制作や現場での作業を行うためには実施設計図が必要で、私たちが手がける図面がそれにあたります。建築物は通常外観から決まっていくものですが、建てる順番は当然骨組みからですから、この図面がないと工事が始まりません。あくまでも根幹の部分なので、建物ができれば内装や設備などの中に隠れてしまいますが、私たちの仕事がなければ建築物は建たないんだという誇りとやりがいがあります。


業務の運用が変わっても、建物が残る喜びは変わらない。

現在、JR大阪駅周辺で行われている「大阪北ヤード」の開発に関わりました。4棟の高層ビルのうち、2棟の構造体施工設計を担当。さまざまな会社が関わっている大規模なプロジェクトなので、2年半ぐらいの年月を要しました。また、最近では大手ゼネコンが導入を進めている3D図面によって、神戸のポートアイランドにある次世代スーパーコンピュータ施設の構造体施工設計も手がけました。3D図面とは設備や電気など、建設の現場に関わるあらゆる業種をデータに盛り込み、積算や収まりを見られるものです。手描きの図面がCADに変わったように、今後は2Dが3Dとなり、異業種間でのスムーズな打合せができるようになるといわれています。しかし、なんでも最初は手間がかかるもの。この流れは始まったばかりで、まだ過渡期にも入っていません。今は3Dの運用のほうが時間と手間がかかっていますが、10年から20年先には、3D図面が主流になるのではないでしょうか。
とにかく納期と精度が重要なのがこの仕事。特に精度という点では、現場で工事を実施するための設計なので間違いは許されません。あり得ない話ですが、高層ビルを建て始めて「あれ?寸法が合わない」では済みませんからね。もちろん社内やゼネコンで何重にもチェックを行いますし、システムでも確認します。鋼構造物は変更がとても多い箇所なので、その対応には非常に気を使いますね。常に時間に追われていますが、自分の関わったものが地図に残る喜びは、それらの苦しみをはるかに上回ります。また、建設業界はいろいろな業種があるので、同じ苦労をした人とのつながりができるのがうれしい。後にまた違った案件で会えることがあるのも楽しみの一つです。


これからさらに増える、文化の違いを超える仕事。

私の会社では中国の大連にも事務所があり、中国人の社員が図面を描いています。日本ではだいたい会社ごとにフォーマットがあるのですが、中国では個人のスキルで描いていくので、当初は人によって描き方がバラバラでした。ルールが多い日本に対して中国は個人主義で、きれいに描くという感覚もない。その良し悪しは別として、文化が違う中で仕事をすることの難しさを思い知りました。いい図面というのは、まず間違いがないこと。そのうえでどのページを見てもレイアウトがだいたい同じで、見やすく統一性があることです。中国で図面の描き方を整えるまでに2年かかりましたが、今では日本の社員より美しい図面を描く人も出てきていますよ。海外での仕事を志す若い人も多いと思いますが、文化や国民性の違いを知っておくことは重要です。


好きなことを突き詰めて、喜びややりがいを感じてほしい。

建設業界内には、「これから変わっていかなければならない」という共通認識があると思います。3D図面を導入するのも、将来的にはコスト削減につながると考えられているから。しかし日本では、海外から来た図面を日本の規格に合わせて描き直すため、仕事をかえって複雑にしてしまっている側面があります。何段階ものチェックや、責任の所在、データの検証を必要とする日本の風土は、あらゆる業種を一つのデータで完結させる3D図面への本格的な移行時に問題となり、大きな変化を迫られるかもしれませんね。今の若い人はパソコンに慣れていますし、それ自体に抵抗はないと思いますが、3Dで図面を描くにしても建築の基礎を修得していることが前提。パソコンを使えるだけでは仕事にならないこともまた事実なのです。学校では業界の中のいろいろなことを広く浅く学べますので、たくさんの引き出しを作れます。その中で、自分が興味を持ったことを深く突き詰めてほしいと思います。
私は幼い頃、漠然と「設計士」に憧れていました。普通科の高校を卒業してこの会社に入り、改めて「設計士になりたい」と思ったんです。そして働きながら修成の夜間に通い、幼い頃の夢を叶えました。修成では妻とも出会いましたし、本当に人生は何が起こるかわからない(笑)。最近は、仕事の喜びを感じる前に辞めてしまう人が多いように感じますね。好きで飛び込んだ世界ならとことん突き詰めて、やりがいや喜びを知ってほしい。そのためには目先に具体的な目標をもって、一つひとつクリアしていくことです。あまり大きな目標を立てると息切れしてしまいますから、マラソン選手がよくいう「次の電柱まで」という感覚で、焦らず少しずつ進んでいけばいい。そうすれば、おのずと道は広がっていくと思いますよ。

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