新たな交通の大動脈となる橋梁(きょうりょう)工事。

川田工業株式会社/新名神高速道路 八幡ジャンクションBランプ1号橋他4橋(鋼上部工)工事

川田工業株式会社 
技術部 大阪技術課 野呂 直樹さん

2001年の入社以来、主に鋼橋や鋼・コンクリート複合構造物の設計を担当。
2013年にはエンジニア最高のライセンスである技術士(建設部門)を取得した野呂さんに、設計の面から土木そして橋梁のおもしろさややりがいを語っていただいた。


構想から約30年、多くの役割が期待される
新名神高速道路。

新名神高速道路(以下、新名神)の開発の構想がもち上がったのは約30年も前にさかのぼります。実際に工事に着手したのは1993年で、2008年に一部が開通しました。現在はさらに西へ、大津ジャンクション(JCT)から神戸JCTまでの工事が行われています。その中で、当社は新名神とすでに使われている第二京阪道路を連結する八幡JCT(京都府八幡市)の工事を行っています。工期は2015年4月から2018年2月までの約3年間。6つの鋼製の橋桁(鋼橋)について、それぞれ設計・製作・架設を行う工事で、私は設計を担当しています。通常は1つの工事で1つの橋をつくりますが、今回は6つ。すべてを合わせると約3000tもの重さになる、なかなか経験することのない大きな工事です。新名神が開通すれば、並行する国道1号の混雑も緩和されますし、インターチェンジ・ジャンクションができることで付近の住民の方々の交通の便が大幅によくなると想定されています。

八幡JCTは第二京阪道路や国道1号と立体交差する。現在行っている工事では、新名神に立体交差する一般道を新たにつくっている。
新名神は名古屋から神戸市を結ぶ自動車専用道路。新名神が開通し、日本の東西を結ぶ複数のネットワークができれば、既存の名神高速道路の混雑緩和に加え、災害時などに代替機能として相互に補完し合うことができる。さらに、建設から長い時間が経っている名神の大規模な補修も可能になると期待されている。

橋梁メーカーは、
橋をつくるスペシャリスト。

現在行っているのは、新名神の上をまたぐ一般道の橋を架ける工事です。この橋は上部工と下部工に分けて発注されており、まずはゼネコンが山を切り拓き、土を掘ったり杭を打ったりして橋脚部分を完成させます。その後、橋梁メーカーである当社が橋桁を架けるという流れです。なぜ橋の上下で工事をする会社を分けるのかと思う方もいるかもしれません。もちろんどちらも同じ会社で工事をする場合もありますが、今回は鋼製(鉄製)の橋桁を採用しているため、鋼製の橋をつくる技術をもつ橋梁メーカーが上部工、コンクリート工事を得意とするゼネコンが下部工と、それぞれの得意分野に分けてつくっています。鋼製の橋は、現場で一から施工できるコンクリート製の橋とは違って工場で製作する工程があり、それが可能なのが橋梁メーカーというわけです。

●基礎
橋の構造物からの力を地盤に伝え、構造物を支えるのと同時に、地盤沈下が起こらないようにつくられている。
●橋脚
橋を基礎から支える柱。
●上部工
橋に人や車両が載る部分。支承より上の部分を指す。今回の記事にある工事はこの部分にあたる。
●下部工
橋脚や基礎など、上部構造を下から支える部分。
●支承
上部構造と下部構造の接点に設置する部材。温度や風、地震などによる橋の変形を吸収するため、上部構造と下部構造は一定の自由度をもたせてつながれる。


強度や維持管理のしやすさなど
多様な条件をクリアした設計に。

この橋は、片側3車線ずつ計6車線の新名神の上をまたぐため、橋脚間が70mと一般的な橋よりも長く設定されています。強度を保つためには橋桁の高さが必要になりますが、高くなるほど重くなるため、軽くて強い鋼製の桁が採用されています。橋の設計は、まず条件整理からスタートします。道路の規格、1日に通過する大型車の交通量、錆を防止する仕様、排水施設の検討など…。橋桁が受けもつ自動車荷重や橋桁・床版の重量などから、橋桁にかかる力を解析し、部材の幅や厚みなどを決定。また、近年地震が頻発していますが、大きな地震が起きても落橋することがないよう、ケーブルで橋桁と橋台を連結する部材の検討、地震で生じる水平力を吸収するようなゴム支承の検討なども行いました。通行する車両の安全のため、路面には適切な排水施設が必要ですし、さらに維持点検への配慮をはじめとした道路管理者の要望も確認。この橋では、道路管理者が維持管理・作業しやすいように、点検経路の計画、検査路はしごを取り付ける位置の検討や、手すりの追加まで、細かな工夫を行いました。もう一つ、鋼橋の長寿命化には防錆処理といって、サビを防ぐ処理が必須です。塗装による処理が一般的ですが、塗装は劣化しやすいため20~30年に一度は塗り替えの作業が発生します。その際、橋桁の下面などに作業足場が必要になるため、下を通る高速道路への影響は避けられません。そこで、今回の工事では金属溶射と呼ばれる高機能な防錆仕様を採用し、塗り替えの頻度を少なくしたり、塗り替えそのものを不要にした範囲があります。こうした主な部材の設計は2か月程度で行い、その後工場で橋桁を製作して、現在は架設の作業に入っています。

<橋桁断面図>
大型車両の通行量などさまざまなシミュレーションを経て、荷重に耐えられる橋桁の厚さが決まる。この橋梁工事の橋桁は、約2.9mもの厚さがある。

コスト削減の意識をもちながら、
橋のプロとして知識と経験を駆使。

橋梁の発注者は、主に国や地方自治体、高速道路会社です。工事は普段私たちが収めている税金や通行料で行われているため、技術者としてコスト削減への責任感をもつことが重要です。良いものをつくることと、税金を使っているという意識のバランス感覚をもち合わせなければなりません。設計というと、パソコンで計算と製図を繰り返していると思われるかもしれませんが、定期的に現場にも足を運びますし、発注者と、施工現場、工場との調整も大切な仕事です。設計者の成果である図面と、資料などをもとに説明し、ヒアリングした意見を反映するなど、対話の能力が求められます。私が描いた図面に対し、現場から「この設計で施工するのは難しい」とか、工場から「どうつくることを想定しているのか?」などと連絡が入り、改善策を考えることもあります。設計にあたっては、こちらからの一方的な提案ではいけませんし、一方でただ発注者の言うとおりにするだけでは不十分です。橋のプロとしてこれまでの経験や事例を生かした提案を行い、最終的に工場・現場で実現可能であるとともに、発注者の要望も反映した図面をつくり上げていきます。

<完成予想図>
橋桁を架け終えると、地盤の高さを整え完成イメージのようになる。新名神の開通は平成35年度の予定。

地名になり、地図に載り、風景になる。
大きなやりがいがある橋梁の仕事。

私が土木や橋梁の世界に興味をもったのは、橋梁の技術者だった父の影響です。子どもの頃、週末にドライブに連れて行ってもらった際、父が携わった橋の近くを通ると誇らしげに話をしていました。私自身は、会社に入った頃は設計の仕事にこだわりはありませんでした。しかし、上司や先輩、他部門の方々に支えられながら設計をするうちに、図面どおりにものをつくるのではなく、その図面そのものをつくる自由度の高さや、自分の意見を反映できる点に魅力を感じるようになりました。また、発注者と意見を交わしながら、一緒に良いものをつくっていけることが大きなやりがいですね。橋は交差点の名称になったり、地図に載ったりするのはもちろん、それ自体が風景となり、観光名所として私たちの生活を豊かにしてくれる面もあります。橋が完成した時も、それが使われるようになってからも、自慢できる仕事です。父が私にしてくれたように、私も携わった橋の近くを通る時には子どもに誇らしげに話をします。橋を「かっこいい」と思ってくれる方は多いと思いますが、どのような会社に行けば橋がつくれるのかわからないということもあるでしょう。そのような方は、ぜひ橋梁メーカーの門を叩いてほしいですね。

現在工事を行っている橋は、下を通る新名神の開通より一足早く、2017年春ごろの開通を予定している。地域住民のみなさんにとって便利な道となる。

現代に求められる機能を備えた
ものづくりを行い、社会に貢献。

今後の土木業界は、昭和の高度成長期につくられた橋や高速道路の更新が重要な仕事になります。それも応急処置的なものではなく、抜本的な補修や更新です。今回担当している新名神の開通によって名神を大幅に補修できるなど、代わりがあって初めてできる更新作業もたくさんあります。また、更新といってもそれらがつくられた頃と現代では事情がまったく違いますので、同じものをただつくりかえればいいのではありません。災害への対策など求められる性能はとても多くなってきていますし、それに合わせて新たな技術も生まれています。私自身も、チャンスがあれば、より大きな橋の設計に挑戦してみたいと考えています。

時代の変化に合わせて必要な役割ができ、新たな技術も生まれる。土木の仕事に終わりはない。

川田工業株式会社

1922年、富山県で設立された川田鐵工所を礎とし、金属加工技術とその周辺技術から橋梁や建築鉄骨などの鋼構造事業を確立。さらに建築事業、地域に根ざした北陸事業を推進。技術や商品の多様性を強みに、より安全で環境性にすぐれた製品・サービスを通じて、いつの時代も社会に必要とされる企業をめざす。経営理念は「安心で快適な生活環境の創造」。
WEBサイト:http://www.kawada.co.jp/