高速道路網の充実化で、さらなる安全と快適を。

奥村組土木興業株式会社/新名神高速道路 川西インターチェンジ工事

奥村組土木興業株式会社 
環境開発本部 本店工事部 工事課 
所長 川﨑 雄介さん

今回の工事をはじめ、現場責任者として携わったプロジェクトは多数。道路工事のほか、上下水道工事、土地造成工事など、さまざまな現場を経験。土木一筋35年の川﨑さんに、業界ならではの魅力ややりがいについて語っていただいた。


手がけるのは日本の東西をつなぐ、
新たなネットワーク。

新名神高速道路(以下、新名神)は、名古屋市と神戸市を結ぶ全長約174㎞の高速道路です。1989年に基本計画が決定後、各地で工事が行われ、すでに一部が開通しています。高槻ジャンクション(JCT)から神戸JCTまでは2008年より順次施工されており、2018年3月に区間全線が開通しました。当社では新名神の川西ICならびに隣接する橋梁(きょうりょう)の下部工を築造する、施工延長1411mの道路築造工事に携わり、アクセス道路である県道川西インター線の土工事も一部担当。工期は5年10ヶ月と稀に見る長期間で、なかなか経験することのない大規模なプロジェクトです。新名神が完成することで、名神高速道路と中国自動車道の交通量が分散され、宝塚IC付近をはじめとする渋滞の緩和が期待できます。またアクセスの利便性向上で人が集まりやすくなり、観光分野の促進や企業の進出など地域社会の活性化になるとともに、大規模災害や重大事故の発生時の代替ルートが確保できるようにもなります。

<施工前の状況>
川西ICの設置場所は、西畦野(にしうねの)地区と石道(いしみち)地区の間の山間部。山を拓き、掘削するところの工事からはじめられた。ICの出入口に接続されるアクセス道路として、県道川西インター線も同時に施工した。
新名神の高槻JCT~神戸JCT間は40.5km。奥村組土木興業(株)では、川西ICのほか、6工事の現場を同時期に施工した。2018年3月18日の川西IC~神戸JCT間の開通に伴い、高槻から神戸までの区間全線が供用となった。通勤やレジャー時など神戸方面や京都方面に行く場合にも、利便性や安全性の向上が見込まれている。

道路築造における土工事は、
全工程のスタートライン。
柔軟なアイデアで発注者の要望に対応。

発注者は西日本高速道路株式会社(以下、NEXCO西日本)で、当社が工事に着手したのは2012年2月です。主な内容は土工事246万㎥、橋台・橋脚24基、ボックスカルバート3基。特に土工事は、近隣・遠方の土砂搬出先18箇所への運土を必要としていたため、業者間の調整や一般道路での運行管理なども行いました。施工完了後、土工部については施設や道路舗装の担当業者へ、橋梁については上部工施工業者へ引き渡す流れとなっており、私たちが期限を守らなければ各部門の工事に遅れが出てしまいます。とはいえ、自然を相手とするのが土木の仕事。実際に施工してみないと把握しきれないことが多く、事前に決められた計画どおりに進められないこともあります。だからこそ図面を正確に形にすることはもちろん、常に現場の状況を見極め、より適切な工程や工法を模索することが重要なのです。
本工事の例を挙げると、新名神の早期開通に向けた全体工程で最優先とされていたのが、ICランプ橋の下部工工事でした。そこで、「下部工工事に必要な作業場を確保するために掘削した土砂60万㎥を場外へ搬出する」という本来の計画に対して、「60万㎥の土砂を搬出ではなく、今後100万㎥以上掘削する箇所に仮置きすることで、ICランプ橋下部工の施工条件をいち早く整えたい。さらにダンプ台数を増やして運搬体制を万全にし、下部工の工事開始と同時に、土砂搬出も一気に進めていきたい」と、NEXCO西日本に工程の変更を提案。その結果、工事が順調に進み、工期に間に合わせることができました。このように現場の状況に合わせて、最適な計画を発注者と協議していくことも、工期厳守のために欠かせない仕事です。

上図は、今回の記事にある土木工事を施工中の写真(2016年1月撮影)。土工部の施工完了後、道路舗装を担当する別会社へと引き継がれ、高速道路が完成する。下図は川西ICの完成予想図。
<ボックスカルバート>
●土工事
建設工事における土を対象とした作業を指す。土を掘り、運び、盛り固めるなどの基礎的な工事のこと。
●ボックスカルバート
地中に埋設される箱型の構造物で、地下に設ける道路となる。それ以外にも、水路、防火水槽、共同溝、雨水浸透などのさまざまな用途に使用されている。
●基礎
地中で橋を支える部分。
●橋台(きょうだい)
橋の両端を基礎から支える柱。
●橋脚(きょうきゃく)
中間にある、橋を基礎から支える柱。
●支承(ししょう)
橋梁の上部工と下部工の間に設置する部材。上部工の回転や伸縮などの変形を吸収し、上部工の荷重を下部工に伝達する役割をもつ。
●下部工
基礎や橋台など、上部工を下から支える部分。記事でふれている工事内容のひとつ。
●上部工
橋に人や車両が載る部分。支承より上の部分を指す。


安全で安心な現場づくりには、
さまざまなアイデアとコミュニケーションが必要。

現場に携わった作業員は一日に最多で300名ほど。現場責任者の私をはじめ、当社からは約20名の職員が施工管理に従事し、安全・工程・品質・原価について一人ひとりが工事全体を見ながら担当部門に分かれ、協力会社26社の管理を行いました。なかでも大変だったのは先述した土砂搬出です。数ヶ月間、最大160台もの10tダンプトラックと15台の25t重ダンプトラックが稼動するということで、より安全に運用するために4名の運行監視員を配置しました。当社から選出した職員がダンプトラック専門の担当者となり、搬出先の協力業者との打合せのほか、交通ルールを守れているか、渋滞や通行止めなど不安要素となるものがないかの把握と周知に徹しました。その結果、運転手と緊密に連携でき、工事現場の敷地外である一般道の走行時にも地域のみなさんに配慮しながら工事を進められました。また新名神の他工事に携わる協力業者と情報共有することも、安全かつ効率的な施工に大事なポイントです。活発なコミュニケーションを通して、情報交換や関係構築を図りました。

搬出先の協力業者との調整、交通災害の確認・予防など、運行監視員の仕事はさまざま。ダンプトラックの管理に専念する役割を設けることで、より安全に走行できる環境づくりに努めた。

地域とつながり、
住民の方々の期待を感じて。

円滑な施工には、発注者や作業員との連携を強化するとともに、近隣にお住まいのみなさんのご理解も大切です。工事の内容や経緯を知っていただくために、開始前から数度にわたり説明会を実施。そして施工完了までは毎月のお便りを通じて、写真と文面で進捗状況を報告させていただきました。また民家と近接した箇所では振動騒音計を現場に配置し、表示盤で数値を「見える化」することで作業時に注意を払うなど、最大限の配慮に努めました。それらの働きかけが功を奏し、工事への理解につながり、地元のみなさんのご意見を反映した工事ができたのだと思います。施工期間中、周辺住民の方に「早く全線が完成してほしい」と声をかけていただいたこともありました。多くの期待を肌で感じられるのは、現場ならではの醍醐味ですね。

川西ICの工事を進めると同時に、新名神にアクセスする県道川西インター線の土工事も一部担当。県道の両端にあるオレンジ色の道路は自転車専用レーン。

伝統と革新、どちらの技術も学べる。
誇りをもって働ける仕事。

土木の魅力は、伝統に培われた部分と発展していく部分が融合した奥深さに触れられることだと思います。この世界に入って35年になりますが、私自身も昔からの技術を守る一方で、社会の近代化に伴う新たな技術を学び吸収する毎日を過ごしています。近年ではICT(情報通信技術)が活用されるようになり、調査・設計・施工・維持管理・修繕の一連のシステムにおいて、コンピュータや通信技術などを導入しました。生産性の向上だけでなく、職員の休日確保や収入アップなど、より良い業界づくりに向けた取り組みが推進されています。伝統を引き継ぎ、新たな技術を習得する―そうして自分も成長できるのが土木の仕事です。
無事に竣工をむかえた時には言葉では言い表せない喜びがあります。そして、ふと思い出すのが同じ土木の仕事をしていた父のこと。私が幼い頃に他界したのですが、自分も現場で働くようになった今、父を身近に感じるようになりました。父が手がけた現場写真を見たり、携わった職員として名前が刻んである記念碑まで足を運んだりするようになり、憧れと尊敬がさらに大きくなっています。

みんなで築いていくからこそ、
大きな社会貢献ができる。

この世界は決して華やかなものではありませんが、この先も必ず求め続けられる仕事です。道路以外にも、港湾整備、河川護岸、ダム、トンネル、上下水道、土地造成など多岐にわたる工事に携わることができ、土木のフィールドはますます広がっています。また発注者や現場の職人さんをはじめ、社内の各部門の職員、さらには地域の方々と一緒につくり上げていくものだからこそ、達成感も大きいです。ひとりでは成し得ないことを、多くの人の力がひとつとなることで初めて完成させることができます。人のつながりを実感できること、自分が一から携わったものが形になること、50年100年と将来にわたって人の役に立つこと…このやりがいを、記事を読んでくださっている方にもぜひ味わってほしいです。

完成した川西ICの周辺地域は、新名神の主な経由地のひとつとなる。高速走行による所要時間の短縮、時間信頼性の向上、事故・災害時における代替路の確保といったあらゆる効果が想定され、地元のみなさんの生活もさらに便利になる。

■名古屋市から神戸市まで、新名神の全線が開通するのは2023年度予定。
たとえば、豊田JCTから神戸JCTまで移動するのに、名神高速道路と中国自動車道経由であれば「240km、約160分」必要なところを、新名神経由であれば「200km、約120分」と、距離も所要時間も短縮できる(時間は規制速度で算出)。

奥村組土木興業株式会社

2020年で創業100年となる建設会社。関西を基盤に全国エリアでの実績が多数あり、土木・建築工事、ガス工事、舗装工事、建設資材の製造・販売、リサイクル事業など、幅広い事業を展開する。最新技術と柔軟な対応力を強みとする一方で、人と人、人と物、人と自然といった、あらゆるものとのつながりに重きをおき、豊かな環境づくりをめざす。経営理念は「ナイスワーク・ナイスコミュニケーション」。
WEBサイト:https://www.okumuradbk.co.jp/

2018年5月掲載

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