地域発展の期待を背負う、一般有料道路の4車線化。

日本ファブテック株式会社/湯浅御坊道路 広川橋他6橋(鋼上部工)工事

日本ファブテック株式会社
計画技術部 
吉村 勇紀さん

これまで名神高速道路と京都縦貫道をつなぐ大山崎ジャンクション橋や、鹿児島空港前の有川4号橋、高知県の新仁淀川大橋などの多様な橋梁工事に携わってきた吉村さん。今後の業界を牽引していく32歳の若き技術者に、土木の仕事の魅力や将来性を語っていただいた。


2021年の開通に向け、
約4kmの区間に7つの橋を新設。

「湯浅御坊道路」は和歌山県御坊市を起点に、和歌山県有田郡有田川町にいたる総延長約19kmの一般有料道路で、1990年に2車線(片側1車線)で建設されました。その後交通量が増加し、渋滞がたびたび起こっているほか、事故が発生するとたちまち通行止めとなってしまうことが課題とされています。そのため、現在ある2車線にほぼ並行する形で4車線化(片側2車線)への工事が計画され、2010年に都市計画が決定された後、2013年に事業化、現在は2021年の開通に向けて建設が進んでいる真っ最中です。当社はそのうち広川インターチェンジから広川南インターチェンジまでの約4kmの区間で、7橋の橋梁上部工事を担当しています。

「湯浅御坊道路」は和歌山県御坊市から和歌山県有田郡有田町までを結ぶ約19km。その4車線化に伴い、日本ファブテック(株)では広川IC〜広川南ICまでの約4kmの区間で7つの橋梁上部工事を順次行っており、2020年8〜9月頃には大半の工事が完了する見込み。道路自体の開通は2021年12月に予定されている。

渋滞の緩和や安全性の向上、
災害時の代替機能も期待される道路。

私たちが担う工事の工期は2017年9月から2020年12月までの1,200日間。実際に現場での施工を始めたのは2018年6月で、それまでは現地調査や設計を行っていました。落札後、実際に工事を行う際には、より経済的で安全性の高い方法を検討し、入札時の図面から再設計を行うのが一般的です。今回も発注者である西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)と当社の設計部で検討を行い、ディテールまですべてを設計しました。図面ができれば工場で鋼桁(鉄製の橋)を製作し、いよいよ現場で着工というわけです。
当社が担当するのは橋梁上部、いわゆる「橋桁と床版」の部分。下部工事と呼ばれる橋脚部分は別の会社が先につくっており、その上に橋桁を架けていきます。新しくつくる7つの橋のうち、5つは本線とインターチェンジ拡幅のために必要なもの、あとの2つは4車線化した湯浅御坊道路をまたぐ橋(跨道橋)の架け替えです。
4車線化によって得られる効果は複数あります。まずは、夏季休暇や繁忙期などの交通集中による渋滞の緩和、そして安全性と走行性の向上。これらによって、より多くの人がこの地域に来やすくなるでしょう。さらに、災害時の代替機能の強化という側面も重要です。たとえば対面通行の道路が損傷すると、スムーズな通行が非常に難しくなりますが、他に車線があれば物資の緊急輸送などを行うこともできます。これらの多面的な効果により、地域の発展につながると期待が寄せられています。

床版の施工に設置する型枠には、主に木の板を使用。木製の型枠にコンクリートを流し込んだ後に、アスファルトを敷き詰め、自動車の走行に耐えうる道路が生まれる。


効率的かつ経済的。
確立された工法で橋桁を架設。

今回は「トラッククレーンベント工法」と呼ばれる架設工法で鋼製の橋を架けています。橋脚から橋脚までの距離が約60〜90mあるのに対し、1つの橋桁の長さは10数メートル程度のため、一度に橋脚間をカバーすることはできません。そこで、まずH形鋼やブレス材で組み立てられた「ベント」と呼ばれる仮の橋脚を立てます。そして、トラッククレーンで吊り上げた橋桁をベントで支えながら、順番に橋桁を架けていきます。橋桁の重さは1つ15〜20tにもなり、1つずつ架けることもあれば、地組立といって、地上であらかじめいくつかの橋桁をつなげてから吊り上げることもあります。このトラッククレーンベント工法は他の工法に比べて費用が抑えられ、工期も短くできることから、鋼製の橋を架ける工事では最も一般的な工法です。橋桁を架けた後、床面のコンクリートを打つ工事まで当社で行っています。

<トラッククレーンベント工法>
トラッククレーンを用い、橋脚と橋脚の間に仮の橋脚である「ベント」を設置。次にトレーラーなどで搬入してきた鋼製の橋桁をクレーンで吊り上げ、ベントで支えながら架設していく。他の工法と比べ工費が安く短期間で施工できるため、鋼橋架設の工法としては最も一般的。

綿密な計画と地域住民の協力で
「施工ヤード」を確保。

今回の工事で最も苦労したのは、大型クレーンやベントなどを据えたり資材を仮置きしたりする「施工ヤード」の確保でした。トラッククレーンベント工法では平坦で強固な地盤と広いスペースが必要ですが、直近上空には片側2車線の道路があること、周辺は田畑や河川で占められており、使用できる土地が少ないことが課題でした。そのため、事前準備として、土木工事を行い施工ヤードを造成しました。それでも広いとはいえないスペースであるため、クレーンの設置位置や橋桁の搬入時期について事前に入念に検討し、無理・無駄のない施工計画を立案。クレーンを据え替えながら進めるなど狭いスペースで工事を行う工夫をしました。この工事は当社だけでなく、トンネル工事や下部工事を担当している会社とも一緒にひとつのプロジェクトを進めているため、発注者や各社の施工管理者と施工ヤードの調整をしながら進めています。
また、どうしても必要な場合は周辺の住民の方々から借地することもありました。そういった交渉も現場監督の仕事です。例えば、田んぼを埋めさせてもらったり、みかんの栽培が1シーズンできなくなるなど、さまざまな補償が必要になります。1軒1軒、丁寧に説明にまわって理解していただき、快く土地を貸していただくことができました。

コンクリート製の橋脚の間にある鋼製の仮受台が「ベント」。周囲は農地や河川などが多いため施工ヤードの広さが十分ではなく、トラッククレーンを据え替えながら作業を進めた。

無駄なく高品質な工事の管理が
施工管理の大切な仕事。

この現場には所長以下8名の施工管理者が携わっており、1日延べ約45名が働いています。施工管理の仕事は、安全・工程・出来形・品質について、多種多様な工種を管理すること。また、先ほど述べたような施工ヤードの計画図の作成、他社との調整なども行います。特に安全管理では、朝礼などで危険作業の周知を徹底し、現場を巡回して現場内に危険な箇所がないかを確認します。また、工程管理では発注者や協力会社、他工事との調整を密に行い、無駄を出さないことが求められます。例えば、鋼製の橋桁など大型の部材はトレーラーなどで搬入するため、綿密な打ち合わせを行って搬入日を決めることが大切です。
さらに出来形・品質管理も重要な役割。発注者の定めた管理基準をクリアするよう施工中も確認を行い、やり直しなく完成できるよう細心の注意を払います。そこでは実際に作業を行う職人さんとのコミュニケーションも欠かせません。時には不具合などで作業のやり直しが発生することもあります。もちろん職人さんにとって気分のいいことではないのはわかっていますが、直すべきものは直してもらわないといけません。納得して理解していただけるよう丁寧に話し、任せた仕事をきっちりやってもらう。それが施工管理者の仕事だと思います。

<橋梁上部に施された免震構造>
世界でも有数の地震大国である日本では、橋梁にも免震構造を施す例が多数みられる。地震が発生した際には、鋼鉄で補強されたゴムの柱が橋梁上部を柔軟に支え、揺れをゆるやかな動きに変える。

何年経っても誇れる
社会貢献度の高さが土木の魅力。

私は今年で入社して10年目になります。そもそも土木の世界に入ったのは、大学受験で建築系の学部に合格できず土木分野に進んだ…という、あまり前向きとはいえない理由でした。入社してからも当初は設計希望だったものの、施工計画全般を立案する部署に配属され、「現場がわからなければ施工計画などできないだろう」という理由で、現場に出ることになり、今に至ります。それでも、初めて現場責任者として携わった高知県の新仁淀川大橋ができたとき、土木の仕事のスケールの大きさに感銘を受けました。地図に残るものをつくり、何年経っても「ここをやったんだ」と誇れる仕事なんだと。大変なことも多いですが、将来にわたって人々の生活に安全性・快適性をもたらせる社会貢献度の高さが、土木の仕事の大きな魅力です。完成時の達成感は何物にも代えがたいものだと、今は誇りに思っています。
特に当社の手がける橋梁の分野は、新設の他に既設のメンテナンスにも携わることができ、今後の国土強靭化を担う大切な仕事です。多種多様な工事がある中、橋梁はインパクトの強い構造物であることも魅力の一つではないでしょうか。ぜひ、橋を架けてみたいという若い技術者が増えてくれることを楽しみにしています。

日本ファブテック株式会社

鋼構造メーカーとして共に創業100年におよぶ歴史を持つ(株)東京鐵骨橋梁と片山ストラテック(株)の経営統合により、2017年に設立。両社は鉄骨や橋梁といった鋼構造物の設計や製作・建設までを一貫して行う専業メーカーで、これまで多数の大型プロジェクトに参画し、大正初期より積み重ねた実績は約5,000橋。ものづくりを支える「現場力」、日々の研鑽の賜物である「技術力」、それを担う「人財」を強みに、社会基盤整備に大きく貢献している。
WEBサイト:http://www.j-fab.co.jp

2020年3月掲載

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