水害に強い街をつくる、河川付替え工事。

株式会社冨島建設/小田川付替え南山掘削他工事

株式会社冨島建設
施工本部 土木部 工事主任 
中野 浩志さん

入社以来20年にわたり、各地で災害復旧や高速道路工事に従事。今回の工事には施工管理として携わっている。現場での工夫や、土木業界の魅力について語っていただいた。

株式会社冨島建設
施工本部 土木部 
久保 敦史さん
修成建設専門学校
建設エンジニア学科(2013年卒業)

建設機械オペレーターとして現場での作業にあたっている。珍しい工法や大型重機を駆使している今回の現場の特徴や、土木業界を目指したきっかけなどを伺った。


西日本豪雨での災害後、
急ピッチで進む治水対策。

中野:この工事は、国土交通省中国地方整備局による「緊急治水対策プロジェクト」の一環で行われています。2018年の西日本豪雨の際に小田川と高梁川の合流地点で水かさが増し、高梁川の影響を受け、支流の小田川が増水したことで堤防が決壊するなどして真備町に甚大な被害をもたらしました。今後そういった災害を防ぐために立てられたのが、小田川の流路を変え、従来の合流地点を4.6km下流に切り替える計画です。当社は南山という山を掘削し、土砂を近くの柳井原貯水池に埋める作業を行うことで小田川の新しい流路をつくるほか、新しい堤防の基礎となる部分を担当。作業範囲は直線距離で1500〜2000mに及び、現在は半分程度まで進んでいます。同時に南山沿いにある県道も一緒に切り替えるため、その下地までを手がける予定です。

<真備緊急治水対策プロジェクト>
高梁川・小田川の合流地点では2018年の西日本豪雨で水位が上昇し、高梁川の影響を受け、支流の小田川が増水したことにより真備町に甚大な被害が発生。このプロジェクトは再度の災害防止のために柳井原貯水池を活用して2河川の合流地点を約4.6km下流に付け替えるもので、小田川の新しい流路をつくるために南山を掘削している。

河川の合流地点を変え、
氾濫危険度の低減に貢献。

中野:2014年度から小田川合流点付替事業を進めていたところ、2018年の西日本豪雨で大きな災害が起きました。そこでスピーディーに治水対策を進めようと、今回のプロジェクトが立ち上がりました。地元で進めていた頃は10年計画だった工事を、大手ゼネコンなどが取り組むプロジェクトとすることで5年程度で終えたいという希望があり、それを叶えるべく効率的な作業に取り組んでいるところです。

久保:工期は2019年6月から2023年3月までを予定しています。小田川と高梁川の合流点を下流に移動させると、小田川の水位が大幅に下がり、増水時の影響を受けにくくなります。その結果、倉敷市街地の氾濫危険度も下がると期待されています。



硬い岩盤を低振動・低騒音で割る
「スーパービッガー工法」。

中野:今回は「スーパービッガー工法」と呼ばれる工法で岩盤の割岩作業を行っているのが特徴です。街中などダイナマイトでの発破ができない場所で用いられる珍しい工法です。作業を行っている南山は岩盤ばかりなので、岩を効率的に割ることができなければ作業のスピードが上がらず、機械の負担も大きくなってしまいます。

久保:スーパービッガー工法は、低振動・低騒音で硬い岩やコンクリート構造物を割岩破砕する工法。実は、「セリ矢(くさび)」を打ち「セットウ(ハンマー)」で圧力をかけて石を割るという日本古来の技法を機械化したものです。まずは岩に専用のビットで直径127mmの長い孔(穴)を開け、そこに「セリ矢」となるビッガーを挿入。そしてハンマーで叩く代わりに、機械で1,700tもの油圧をかけて岩盤を割っていきます。私はスーパービッガー工法に携わるのは初めてだったため、最初は戸惑いましたが、操作スピードや周りの状況を見ながら作業の優先順位を決め、効率的な方法を試行錯誤しました。現在はこの工法での割岩の後、油圧ブレーカーでさらに岩を細かくする2次破砕を担当しています。

<スーパービッガー工法>
専用のビットで長い孔(穴)を開けた岩に「ビッガー」と呼ばれるくさびを打ち、油圧機械で高い圧力をかけて岩を破砕。直径127mmの孔に1700tもの圧力をかける。低振動・低騒音で行える工法のため、街中などダイナマイトによる発破が行えない場所で用いられることが多い。

国内でも珍しい大型重機や
ICT施工を駆使し、作業を効率化。

中野:この現場ではICT施工も取り入れています。これまで土木工事は測量を行ってからでなければ作業ができませんでしたが、バックホーやブルドーザーにGPSをつけることで、この重機が地球上のどこにあるかが正確にわかるようになり、測量をしながら作業ができるようになりました。平面や3Dで表現された完成形の図面を重機に搭載しているため、土を掘る箇所や深さもミリ単位で把握し、オペレーターが複雑な操作をすることなく、前進とバックだけで図面通りの施工ができます。環境によって電波状況が悪くなるなどの課題はあるものの、人が測量していた時間を省き、経験の浅い技術者でも熟練工並みの施工ができるのが大きなメリットです。

久保:さらに、国内でも数台〜数十台しかないレベルの大型重機を取り入れているのもこの現場の特徴です。バケット容量6立方メートル級のバックホーで破砕した岩や土砂をすくい、40tの重ダンプに積み込みます。重ダンプの積載量は20立方メートルで、10tダンプの3倍以上。これは公道を走れないほどの大きさで、現場での運搬のみに使われます。現場からは大量の岩や土砂が出るため、一度に多く積載できる重機を使うことで、できるだけ効率よく運搬できるようにしているのです。こうした大型重機は山奥で行うダム建設の現場などではよく使われますが、この現場のように街中の工事で使われるのは珍しいので、周辺にお住まいの重機好きの方がよく見ておられます(笑)。また、現場で働いているオペレーターより重機の数の方が多く、それぞれ掛け持ちで重機を扱っています。

<ICTと大型重機で効率化>
重機にはGPSを搭載し、作業箇所や土を掘る深さをミリ単位で把握。オペレーターは完成形の図面を確認しながら作業を行う。さらに、この現場では国内でも数少ない大型重機が活躍。大量の岩や土砂を扱うことで作業効率を向上させている。下の写真の右側が一般的なバックホーであるのに対し、左側のバックホーの大きさは一目瞭然だ。

何より安全を第一に、
ともに作業する他社との調整に注力。

中野:施工管理として、何より大切にしているのは安全です。日々現場を巡回し、問題があると感じた時は作業者に声をかけ、作業を止めるか異なる方法で進めるように指示します。その上で、大型重機の作業を効率的に進めるにはどうすればいいかを考え、時には元請け企業に掛け合って調整してもらうことも。さらにこの現場は、当社が掘削した後を追う形で他社が法面を整えていくため、必ず順番に作業しなければならないのが苦労している点です。そのため「ここを先に作業してほしい」「◯日までに終わらせて」など自社の作業者への的確な指示と、他社と作業の箇所やスピードを調整する力が求められます。私がこの現場に入ったのは着工後でしたが、周辺を少し歩くと水に浸かった跡があるなど、災害の爪痕を感じることもあります。できるだけ早く完了させ、住民の方々に安心していただきたいですね。

久保:安全が第一なのは、重機を扱う立場でも同じです。毎日の点検は欠かせませんし、異常を感じた際にはすぐに現場監督に報告することが大切です。特にこの工事は大型の重機やダンプを扱っているため、一歩間違うと大事故になりかねません。周りの安全に気を配りながら、工事をスムーズに進めるための優先順位を考えて作業することを心がけています。一時期、柳井原貯水池でブルドーザーに乗ってダンプから土砂を受け取り、貯水池に投入して所定の高さに埋立する作業を行っていたのですが、時にはダンプを貯水池内に引き込んで作業することもありました。水深がはっきりわからない場所に40tもの重さのダンプが入るため、いつも以上に重機やダンプの足元に気を配り、危険がないか確認しながら慎重に作業を進めたことが印象に残っています。


地形を変え、地図に載る仕事。
貴重な体験ができるのが土木の魅力。

中野:私は当社に入社して20年になります。これまで雲仙・普賢岳や、2011年の台風12号で被害を受けた紀伊半島など、多くの災害復旧に携わってきました。他に、会社としては関西国際空港や明石海峡大橋の建設といった大きなプロジェクトにも携わってきた歴史があります。こうした一般の人では立ち入れない場所で仕事ができる点がこの仕事の面白さであり、特に災害復旧では地元の方に感謝の言葉をいただけるのもやりがいになります。また、土木はよく「地図に載る仕事」と表現されるように、仕事の成果が形として残るのが魅力。そして地形を変える仕事でもあり、今回も川の流れを変えるという貴重な体験ができていると感じます。ものづくりが好きな方はもちろん、地図や地形が好きだという方も、その思いを生かせる仕事なのではないでしょうか。少しでも興味があれば、ぜひ土木業界の門を叩いていただきたいです。

久保: 私がこの世界に入ったのは、子どもの頃から重機が大好きだったからです。重機に乗って仕事をしたいという夢を実現した今、仕事が形となって残ることはもちろん、作業がうまく進んだり、一緒に作業している方に「またお願いしますね」と感謝の声をかけられたりするのがとても嬉しいです。そして私も中野さんと同じく、これまで災害復旧に多く携わりました。特に東日本大震災の被災地である岩手県や福島県では、街の状況を目の当たりにすると胸に迫るものがあり、自分の仕事が少しでも早く元通りの生活を取り戻せる助けになればという思いが湧き上がったことを記憶しています。 これから土木技術はさらに進歩し、若い技術者でも熟練工のように仕事ができるシステムがどんどん普及していくでしょう。機械が好き、運転が好き、地図に残る仕事がしたい…そんな若い方に土木業界を目指していただけたら嬉しいですね。

株式会社冨島建設

1950年創業、大型建設機械を駆使した施工を行う総合土木工事会社。ダム工事や敷地造成、道路工事、河川改修、災害復旧など多岐にわたる実績を上げているほか、機械化土木のパイオニアとしても知られる。1990年代からラジコン操作による無人化施工に取り組み、近年はICT施工、自動化施工も積極的に導入。
WEBサイト:http://www.tomijima.com/

2022年3月掲載

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