Creator's File 株式会社桑原組 馬塲雅弘の仕事

株式会社桑原組 馬塲雅弘の仕事
株式会社桑原組 馬塲雅弘 MASAHIRO BANBA

1999年、修成建設専門学校土木工学科卒業後、株式会社桑原組に入社。土木施工管理技士、舗装施工管理技士として高速道路や一般道路の設置や改修業務に携わり、全国を飛び回っている。そのほか、学校のグラウンド改修、空港の滑走路の改修、重要文化財の寺院の防災施設等の整備事業などにも幅広く従事。普段はにこにこと穏やかながら、仕事では一転、厳しく真剣な表情を見せる。

現場をまとめるには、コミュニケーション力が必須です。

高速道路や一般道路などの公共インフラ新設工事の舗装部門に従事しています。主に国土交通省からの発注を受け、会社の窓口として発注者とやりとりをする現場代理人や、施工現場を管理する監理技術者を兼任。具体的な内容は、発注者や協力会社との打ち合わせ、必要書類の作成、現場の工程管理、作業員の手配、安全管理など、多岐にわたります。施工時の技術説明をするため、営業と一緒にお客様のところへ提案に行くことも。また、現場近隣への配慮も欠かせません。住民の方を対象に工事についての説明会を実施するほか、現場では作業で使用した重機のタイヤをきちんと洗浄し、土や泥を落としてから道路へ出るよう全員で徹底しています。こうして周辺環境に気を配って作業を行うことで、住民の方と良い関係を築くことができるんです。これは実際に仕事をして初めて知りました。学校での実習とは異なり、プロの現場ではさまざまなことに目を向けなければならないのだと実感した覚えがあります。
入社時は、新人ながら協力会社の方に指示を出す立場で業務にあたっていたので、早くみんなに認めてもらいたいとがむしゃらに頑張っていました。初めてのことが多く、毎日が刺激的でとても楽しかったです。新人のうちは、わからないことを先輩や上司に遠慮せず聞くことが大切。それができるのは、新人の特権だと、後輩にもいつも伝えています。

土木の道に進もうと決めたのは、高校生のとき。友達の家が経営している土木の会社でのアルバイトが楽しかったから。調べると修成で土木に必要なスキルを身につけられるとわかって、入学を決めました。入学後は滋賀県の実家から学校まで遠いため、大阪で一人暮らしをしている兄の家に下宿していました。特に今でも覚えているのは、さまざまな実習です。コンクリートの配合設計やアスファルトの施工など、後に経験しておいて良かったと思いました。当時は学んでいることがどんな場面で役立つのかわからないこともありましたが、働きだしてから、あのときの学びはこのためだったんだな、と改めて理解することも多かったですね。現場で生かせるスキルを身につけられていたことを実感しました。現場での経験が豊富な先生方ばかりなので、特に実際の作業で必要なこと、求められることなど、ポイントを押さえて指導してくれていたと感じます。

社会に必要とされ、成果が歴史に残るやりがいは、何ものにも代えられない。

印象に残っている仕事は、関西国際空港の滑走路等改修工事。会社としても珍しいプロジェクトでした。一晩のうちに仕上げなければならず、普段は1台しか使わない切削機を7台も使用した、大がかりな工事でした。このとき、30歳の誕生日を滑走路の上で迎えました(笑)。土木の仕事の大変さは、自然環境を相手にすることにあると思います。屋外なので夏は暑く、冬は寒いです。また、限られた時間の中で作業をしなければならない中、天候の急変等で工程や計画を組み直さなければならないこともあります。しかし、大自然を感じながらできる仕事はなかなかありません。開放感があり、気持ちがいいですよ。
土木分野の中でも、最後の仕上げの工程にあたる舗装の仕事の楽しさは、なんといってもできあがりを見られること。施工開始時からだんだん風景が変わっていく楽しさを味わうことができます。道路の施工ですべての工程が終わり、無事に車が通ったときは、充実感もひとしお。この仕事、実は、誰よりも早く新しい道路を通ることができるという特権があるんですよ(笑)。また、よく言われるように、地図や歴史に残る仕事でもあります。広く人々の生活に必要とされるものをつくりあげる達成感は、何ものにも代えがたいものがありますね。

私が携わる業務の幅はとても広いですが、大手の会社では分業化されていることがほとんど。中小企業だからこそ、事務から現場管理まですべてをしなければなりません。しかし、これは決して弱みではなく、私はむしろ強みだと考えています。予算が数億円という規模のプロジェクトがどのように進められるのか、どの工程で何が必要なのかなど全体を把握できるため、どんな場面にも対応できるオールマイティな能力を身につけることができます。
現在、土木分野でもICT化がどんどん進んでいます。今後の課題は、こうした新しい技術を勉強して、さまざまな業務に取り入れていくことですね。例えば、端から5mの地点を掘る、という場合、これまでは現場を測量して地面に印をつけ、オペレーターがそれを目安に重機を操作していました。ICT化されると、施工の管理者が事前に重機にデータを打ち込むことで、重機が5m地点を判断してオペレーターの操作をサポートするため、作業がスムーズに進行します。こうして現場の工程は速く進みますが、事前の準備が必要になり、それぞれの過程への時間のかけ方が変わってきます。新しい技術がますます発展し、仕事の仕方が大きく変わるため、業界としても、今が大きな転換期だと感じています。しかし、情報化が進んでも、基礎知識をおろそかにしてはいけません。在学中に身につける数学などの基礎知識が、情報化施工でも大切な土台となります。そのうえで、実習や課外活動で、今しかできない経験をたくさん積んでください。将来、きっと役に立つはずです。

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