Creator's File 村本建設株式会社 加藤達男の仕事

村本建設株式会社 加藤達男
村本建設株式会社 加藤達男 TATSUO KATO

1992年、修成建設専門学校建築工学科を卒業後、村本建設株式会社に入社。数々の現場で施工管理を経験し、建築統括部での勤務を経て、現在は奈良本店の建築部で工事所長として活躍。一級建築士、1級建築施工管理技士だけでなく、1級土木施工管理技士の資格も持ち、豊富な知識と技術、そして気さくな人柄で、多くのスタッフから頼りにされている。

高校1年生、2年生の頃は、進学ではなく就職する道を考えていたものの、3年生になり、卒業が近づいていくごとに、「資格を取って、手に職をつけたい」という想いがどんどん強くなっていき、修成建設専門学校へ入学。授業では、主に施工管理や製図についての知識と技術を基礎はもちろん、実践的な内容までじっくり学びました。最初は覚えることも多く専門用語ばかりで大変に思うこともありましたが、周りの友人たちと励まし合ったり、将来の夢を語り合ったりと、同じ目標を持つ仲間の存在が励みになっていました。そして学び続けていくうちに、少しずつ業界の知識が身についていることを実感でき、学ぶ楽しさも感じられるようになり、とても充実した2年間を過ごすことができました。
村本建設に入社後は、わからないことだらけで、一つひとつの案件をがむしゃらに頑張る日々を過ごしていました。その中では、仕事の厳しさだけでなく、働く楽しさも感じられるようになった頃、多くの人との出会いに対する感謝の気持ちが強くなり、仕事への情熱もさらに大きくなりました。現場管理の難しさを痛感したときには、それまで厳しかった先輩から「今が一番成長できるチャンスだ」と、熱いエールを送ってもらったこと。後輩からは質問されすぎて、ときには「そんな内容まで私に聞くのか」と、思わず笑ってしまったこと。そうした一人ひとりとの関わりすべてが、私自身の大きな力となっています。

建設現場の工期は、施工内容の規模や状況によって、半年くらいのこともあればそれ以上かかるものもあります。以前私が施工管理で携わった、五條市上野公園総合体育館「シダーアリーナ」の工事は、2015年春の着工から2016年秋の竣工までの1年半の間で、のべ21,000人と、非常に多くのスタッフが関わる大規模なものでした。
施工を進めるにあたって、あらゆる場面で高精度な品質を要求されるものだったので、数々の現場に携わってきた私にとっても初めての試みが多くありました。特に施設の特徴となる大きな屋根を完成させるまでには、何度も苦労を強いられました。土地の測量・敷地の整備から施設を支えるための躯体工事までを行った後、当初の予定では足場をすべて組み、屋根工事に着工する段取りでしたが、コストも時間もかかりすぎてしまい、安全面もさらなる強化が必要だと判断し、急きょ工法を変更。部品を地上で組み立て、仮組した大ブロックを屋根構造箇所に取り付ける工法を採用し、足場をかけずに作業できる環境を整えたことで、無事工期までに間に合わせることができました。また五條ならではの木の文化を大切にした近代的な木造建築を形にするために、屋根部分にトラスという木製部材と鉄骨キール部材の両方を使って、特殊な工法を導入したことも、なかなか経験することができない貴重なものとなりました。

現場の一体感は、いいものづくりのために欠かせないもの。立場や年齢、職歴を問わず、現場がひとつになることがとても重要で、そうした良好な関係性の構築があってこそ、安全かつ高品質な建設物を生み出すことができるのだと考えています。現場の人たちみんなで一丸となれるよう、私が現場責任者としていつも心がけているのが、スタッフがイキイキと仕事に打ち込める環境をつくることです。自分から率先して、あいさつなど声をかけたり、現場ごとにさまざまな取り組みを実施したりと、建設物が出来上がっていく過程での進行管理を通して、スタッフとの活発なコミュニケーションを図っています。
現在進めている大学施設の現場で行った取り組みの例であれば、作業中の建設現場を会場に、スタッフの家族を対象とした職場見学会を開催。ただ働く姿を見てもらうだけではなく、クレーンやショベルカーの体験ブースも設置し、リアルな展示会としてお子さんにも楽しんでもらえるよう工夫しました。その結果、子どもから大人までご家族のみなさんに喜んでもらえただけでなく、スタッフのモチベーションも上がり、さらには職場内のより良い関係づくりにつながり、現場の活気を高めることができました。

この仕事ならではの魅力。それはやはり、自分が手がけた建設物をいろんな方に利用してもらえることだと思います。自分が関わった建設物を通じて、たくさんの人に感動してもらえる。その喜びを味わえることが、とても幸せです。シダーアリーナが出来上がって間もない頃に家族と一緒に訪れたときにも、「わあ、すごい!」と、家族が驚いている姿を見て、とても誇らしい気持ちになりました。これまで、この道一筋で頑張ってきて良かったと、心から感じた瞬間でした。今でも過去に自分が携わった建設物に足を運んでは、そうしたさまざまな方の「喜び」を感じ、私自身の糧にしています。
建設の業界というと、厳しい仕事という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在は国の政策として働き方改革が導入され、あらゆる現場でも推進されているので、心配はいりません。この業界に入って早25年、私自身もその変化を実感しています。大きなやりがいを味わえるうえに、安心して働ける。これからの建設業界には、より良い未来が待っていると思います。

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