Creator's File 株式会社ナカムラ 代表取締役社長 中村 栄樹の仕事

株式会社ナカムラ 代表取締役社長 中村 栄樹 Yoshiki Nakamura

1991年、第2本科建築工学科(現:第2本科建築学科)卒業。
設計事務所などを経て実父が経営する株式会社ナカムラに入社、36歳で社長に就任。
全棟構造計算を行う安全で安心な木造建築にこだわり、木材・金物の製造販売だけでなく公共施設や住宅の建築にも携わる。

木材についての知識を養い独自の工法を開発。

木材の輸入業に携わっていた父親が独立した会社の2代目の社長を務めています。子どもの頃に父の仕事の影響で建設業界に興味をもち、「人と接するのが好きだから設計の分野に進もうかな」というぐらいの気持ちでいました。高校卒業後、設計事務所で図面を描いて働きながら、修成の2部(夜間)に通いました。修成を卒業してからは当時父の会社でお付き合いのあった方が独立されるということでそちらにお世話になり、その後、父の会社に入って木材の輸入販売に携わりました。その間、2年間カナダに赴き、現地とのコネクションやノウハウを得て帰国。工務店や設計事務所、不動産会社に向けて営業を行っていました。当時は輸入木材と、集成材といって、木の節や割れを除いて乾燥させ数層にわたって圧着させた部材を扱っていました。そんな中、1995年の阪神・淡路大震災が発生。木材家屋が数多く倒壊したことを受けて、木材と金物を使った工法が確立されました。そこで、当社もプレカット事業に参入しましたが、下請け生産だけではどうしても経営に波がありますので、経営的に自立することをめざして独自のNK金物・NK工法の開発にいたったのです。 安心で安全、しかも木の温かみがある建物をつくるために。


全棟構造計算にこだわり強い木造建築を提供。

NK工法とは、全棟許容応力度計算を行い、オリジナルのNK金物を使って木材の接合部分の強度を維持し、鉄骨RC構造と同等の強度をもちながら基礎を軽くすることができる工法で、耐震・耐風・耐積雪で最高等級の証明を行います。コストの削減と工期の短縮が図れるほか、見た目に木の温かみがありながら間取りの自由もききます。法律上、鉄骨RC構造はすべての建物で構造計算を行いますが、木造は2階建てまでは設計者の判断に委ねられています。その点で木造建築に興味はありつつも強度を不安に思っていらっしゃるお客さまが多いため、当社では全棟構造計算を施すことにこだわっています。構造計算専門の会社も立ち上げ、ベトナムにも30名のスタッフを置いて初期段階の計算を行い、さらなるコストダウンにも取り組んでいます。このように、昔は骨組みと建材しか扱っていなかったところに住宅建築を取り入れ、お客様のニーズに合わせて、いつの時代も必要とされる会社でいられるように事業を広げてきました。私自身が営業をしていた頃から、もう10年以上のお付き合いになるお客さまもいらっしゃいます。営業的には案件が終わって集金すれば一つの区切りにはなりますが、人と人との付き合いやつながりが広がっていくところがこの仕事の魅力ではないでしょうか。以前は目の前の仕事に一生懸命でしたが、社長となってからは、社員のみんなのおかげで会社があるのだと改めて実感するようになりましたし、社員の生活の場である会社を率いる者としての責任を常に感じています。 現場を実際に見ていただき、木造建築の魅力を広めたい。


木造建築の魅力を社会へ広めるために。

木造業界の将来は、そう甘くはないと見ています。木造を専門に扱ってきた人は、まだまだ昔ながらの大工の感覚や古くからの慣習にとらわれているように感じます。しかしその点を少しずつ時代の流れに合わせて変化させ、多くの鉄骨RC構造の物件の一部でも木造へと変えることができれば、業界は潤っていくと思います。そのために、私の会社では「京阪神木造住宅協議会」の事務局を起ち上げ、現場にお客さまや設計士を招いて構造の見学会を実施したり、講習会を開いたりするなど構造計算を行う木造建築の普及を図っています。現場で現物を見ていただくことを通じて、設計士さんたちの間で情報交換をしていただき、実際に全国から問い合わせが来るようになりました。国の政策としても木材をもっと使っていこうという方向になってきていますし、最近では保育園や福祉施設といった公共施設などにも木材を使いたいと、大型物件も増えてきています。みんなが安心して安全な建物で過ごせるようになることが私の願い。そのためには、木造を含め全棟構造計算の実施が必要です。大手のゼネコンが本格的に取り組み出せば道筋はついていくと思いますが、私たちも地元の工務店や不動産業者に地道に働きかけ、強い木造建築を広めていきたいと考えています。 お客さまのニーズ、時代の流れに合わせて事業を拡大。


資格をもってどう活躍するか考えながら学んでほしい。

これから建設業界に入ろうと考えている若い方にアドバイスできるとすれば、「意志をもって学ぶこと」です。当然、二級建築士、一級建築士など資格取得のために学校に通う方が多いと思いますが、設計士として生きていくなら資格は持っていて当然。タクシーの運転手さんが運転免許をもっているのと同じです。資格は「もっている」だけでは意味がない。もって何をするのかを明確にして学べば、知識の定着のしかたも変わります。構造計算の分野は仕事がありすぎて間に合わないぐらいですから、興味をもってくれる方がいれば、活躍できる場はたくさんあると思います。鉄骨RC構造の構造計算をできる人はいますが、木造の計算をできる人はまだまだ少ないのが現状。多くの若い人が木造建築に興味をもち、その普及を担ってくれることを切に願っています。

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