Creator's File 中井商工株式会社 嶋本 勝の仕事

中井商工株式会社 嶋本 勝の仕事
中井商工株式会社 嶋本 勝 MASARU SHIMAMOTO

2004年に土木工学科卒業後、橋梁・構造物の補修を手がける中井商工株式会社に入社。全国各地の橋梁の設計業務をメインに現場監督を務めるなど様々な業務を経験。
2011年には1級土木施工管理技士を取得。

最小限の作業で最大の成果を生む努力。

現在勤めている中井商工は、橋梁・構造物の総合メンテナンス会社です。得意分野は、橋梁の継手部分にある伸縮装置の止水。具体的には伸縮装置内に入った雨水が桁に漏れ出し、橋梁が腐食するのを防ぐための商品・技術を提供しています。設計部に所属する私の主な業務は、自社の止水材を橋梁の伸縮装置内に入れるための図面作成です。部署単独で動くわけではなく、まず営業部から図面作成の依頼を受け、現地調査を実施。温度による伸縮装置の形状変化なども加味したうえで、作図を行います。自分が考えた設計によって傷んでいた橋梁が新品同然に生まれ変わる瞬間に立ち会えるのはこの仕事の特権。地域の人から「きれいにしてくれてありがとう」と言われることもあるんですよ。
私が携わっている橋梁は公共物なので、図面完成後、地域のお客様のチェックを受けることがあります。その際は社内で行っている止水検査の結果なども提出し、担当者の許可がスムーズに下りるように努力しています。このように社内外で人と接する機会が多いので、技術職といえども対人能力は求められますね。また、次々と案件が舞い込んでくるため、作業を最小限に抑え、テキパキと効率よく業務を進め、よりよい成果を出すことにこだわっています。とはいっても、図面段階でお客様の許可が下りなかったり、現場で図面が間違えていることが発覚したり、進行が滞ることもあるのですが、いくつもの困難を乗り越え、全工程を終えたときは毎回達成感がこみあげてきます。


修成で過ごす中で築いた土木技術者としての基礎。

高校生の頃、テレビ番組で建築士が家を設計している様子を見て、かっこいい職業だなと憧れるようになりました。けれど、周りの人にそのことを伝えると、プロになるには絵を描く能力が必要なことが発覚! 昔から絵が大の苦手だった私の夢はそこでついえました(笑)。次の就職候補として考えたのが土木業界です。その理由は、建築業同様、ものづくりに携われるから。また、父親が役所の土木科に勤めていたのも心強かったです。修成では土木の世界でバリバリ働いている外部講師から直接指導を受けることができました。特に現場での体験談を交えながら、「この作業は注意が必要」「この計算式はちゃんと勉強した方がいい」「プロの世界ではこういう資格が役立つ」とピンポイントでアドバイスをいただけたのは勉強になりました。授業の内容も実践に即したものばかり。その中でも私が好きだったのは力学とCADです。学校で習うこととプロとして求められるもの、そこには当然、大きなレベルの差があるのですが根底は同じ。学生時代に得た知識や技術は今の自分の土台となっています。修成に通っていた頃の同級生とは今でも仲良しです。土木の現場で活躍している友達が多いので、食事に行った際には仕事の話で盛り上がっていますよ。 美しい橋が生まれるその瞬間に立ち会えるのは感動ものです。


困難の先には成長がある。だからいつでも全力投球。

今でこそ業務の大半が止水設計ですが、若手時代は経験を積むために色々な仕事を任されました。特に印象に残っているのは、耐震工事の設計に初めて携わったときのこと。工事に入る前に元々ある設計図面に不備がないかどうか設計照査をしました。その際、設計図通りに施工すると、ブラケットを固定するために埋め込むアンカーバーの先端が橋台の鉄筋にぶつかってしまうことが判明。アンカーバーを埋め込む位置やブラケットの構造計算など、当初の設計の変更を余儀なくされました。大変だった分、工事が終わったときの喜びは大きかったですね。現場代理人として初めて工事の指揮にあたったのも、思い出深い仕事のひとつ。工事の内容は、橋のジョイント部分を取り替えるというものでした。現場一丸となって古いジョイントを取り外すためにコンクリートを削っていると、職人さんから「下の土台がボロボロなので、このままコンクリートを削るとジョイントが落ちる。どうしたらいい?」と相談を受けました。工事未経験だった私はあたふたしてしまい、職人さんは激怒。結局、事務所に連絡して上司に現場まで来てもらい、対応しました。当時は落ち込みましたが、今振り返るとこういう失敗の一つひとつが自分の成長につながっています。


未来の土木業界のために知識と技術を受け継ぎたい。

自然災害が頻発している日本において、土木業のニーズはますます高まっています。けれど、この業界は現在、人材の不足や高齢化という問題を抱えています。これからも厳しい状況が続くと思うので、今働いている若い世代を一人前に育て上げることが私たちの役目になってきますね。自分が知っていることは惜しむことなくどんどん引き継いでいきたいと考えています。学生時代の自分にも言ってやりたいことなのですが、この世界を志すみなさんには思いきり勉強してほしいですね。その中で得た知識や技術は何一つ無駄になりません。すべてが将来の武器になるはず。たとえ、業務で直接役に立たなかったとしても、お客様や社内の人と会話をする際に必ず活かせます。地域の人たちの生活を支え、社会基盤を作る土木業の未来を一緒に盛り上げましょう。 先輩が僕を育ててくれたように、僕も次の世代を育てたいですね。

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