倉方:次は大阪市中央公会堂です。この建築物は大正時代に建てられました。外観を見て、みなさんお分かりですよね。

小林:オーダーがありますね。

倉方:その通り。大阪市中央公会堂も古代ギリシア・ローマで用いられていた建築様式の流れを汲んでいるんですよ。しかし、日本銀行大阪支店にはない要素があります。それが、半円型の「アーチ」です。

二宮:確かに、先ほどの建物にはありませんでした。

倉方:はい。アーチは古代ローマで生まれたもの。古代ギリシアの建築物にはないデザインです。ここから少し、西洋建築史のお勉強をしましょうか。古代ローマの時代に現れたつくり方がここにもう一つあります。あのオーダーをよく見てみると、壁にくっついていて、独立した柱にはなっていませんよね?

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寺田:飾りになっています。いわゆる「つけ柱」ですよね。

倉方:そうです!英語でピラスターと呼ぶこのつけ柱もまた、古代ギリシアの建築様式にはないものなんですよ。実はこれを設置しなくても建物は建ちますが、やっぱりあった方が立派に見えますよね。それでは、次の質問です。この大阪市中央公会堂の用途は何でしょうか?

小林:う~ん。公会堂って名前ですし、何かの講演会を開いたりとか。

倉方:そうそう、小林さんのおっしゃる通り、ここは講演会や会議、コンサートを開いたりする場所で日本銀行 大阪支店とは違い、図書館や美術館のように一般の人が利用する、いわゆる「公共建築」です。

二宮:そうなんですね!すごくウエルカムな感じがしますもんね!

倉方:そうです。では、なぜそう感じるんだと思いますか?

寺田:階段が広くて、豪華な印象を受けるからではないでしょうか?

倉方:うんうん。実はよく見ると入口が狭いんですけど、そこにつけ柱やアーチがあって、中心に目を引きつけるようになっていて、いかにも「迎えています!」って設計ですよね。さらに、このレンガと石のコントラスト、遠くから見ても、すごく目立ちます。では、また質問です。この建物は、どうして、こんなに目立つんだと思いますか?

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小林:う~ん。周りに高い建物が建っていないからでしょうか?

倉方:では、なんで、ビルがないんだろう…?

寺田:川に囲まれているからです!

倉方:素晴らしい!「中之島」という地名は名前の通り、昔から川の中にあります。そのため、当時から建物が周囲から見つめられるひらけた場所でした。さらに、明治時代、大阪の主な交通網は川、つまり、船で移動していたので、遠くからはもちろんのこと、船上からも美しく目立つ設計にしたわけです。

小林:100年以上前の建物が、今でも変わらずにこれだけ目を引くことを思うと、本当に見事ですね。

倉方:そう。なので、中途半端な建物を建てるわけにはいきませんよね。そこで、建築の専門教育を行う学校を初めて日本に設立して、その最初の卒業生がこの建物を設計しました。それが、日本の近代建築を代表する大建築家「辰野金吾」なんです。日本ではじめて建設分野の専門教育を受けた、つまり、みなさんの大先輩です。

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小林:興味深いお話ですね!

倉方:それから、この建物は主に石が使われていますが、それまで日本の建築物は基本的に木造でした。そのため、建設に適した石が日本のどこにあって、どのように加工するのかを誰も知らなかった。そこで、日本中を調査して、加工する職人も育てて、ようやくこの建物が完成しました。つまり、日本銀行大阪支店の建設は、日本が先進国へ仲間入りするために、当時の技術を結集させた一大プロジェクトだったというわけです。

寺田:これからの日本のために、国を挙げて挑戦した人々のことを考えると、同じ国で、同じ道に進んだ者として誇らしく思いました。

日本銀行 大阪市中央公会堂

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大正2年(1913年)に建てられ、その壮麗な建築様式と歴史的な価値から、公会堂建築物としては、西日本で初めて国の重要文化財に指定。また、中之島の景観に欠かせない名所としても人気を集め、今も昔も人々に愛されている。

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大正2年(1913年)に建てられ、その壮麗な建築様式と歴史的な価値から、公会堂建築物としては、西日本で初めて国の重要文化財に指定。また、中之島の景観に欠かせない名所としても人気を集め、今も昔も人々に愛されている。

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