株式会社関西エンジニヤリング 土橋 傑の仕事

インフラ整備で社会に広く貢献できるのが土木の仕事の魅力。

1975年に父が興した建設コンサルタント会社の二代目の代表取締役を務めています。みなさんにはあまり聞きなじみがないかもしれませんが、建設コンサルタントとは、公共事業の調査・測量・設計といった、実際の施工にいたるまでの工程を担う会社です。日本の公共事業は設計と施工をそれぞれ別の会社に発注することが土木業界では一般的であり、まず私たち建設コンサルタントが落札後に役所の方と打ち合わせして設計条件などを確認し、現地調査・測量を行って設計した図面などを納めます。そしてその成果物をもとに役所が工事を発注する…という流れで進むため、建設コンサルタントは公共事業に欠かせない存在なのです。数多くの種類がある土木設計の中で、当社が得意にしているのが下水道施設。下水処理場の機械・電気設備や、道路の地下を通る管(管渠)の設計を数多く手がけています。下水道はみなさんの目に触れることはほぼないため、イメージされるのはマンホールくらいかもしれません。しかし、私たちが清潔な水をたっぷり使えるのは下水道があるからこそ。重要なインフラの整備を通して、社会に広く貢献できるこの仕事に魅力を感じています。

実は、私は高校時代はこれといってやりたいこともなく、父の会社を継ごうとも考えていませんでした。仲の良い友人が修成に進学して土木を学ぶと言うので、私もそうしたというのがこの世界に入ったきっかけです。ただ、やるからには人の倍のスピードで成長したいと考え、昼間は修成の近くにある土木工事会社に勤めて建設現場で働き、夜に修成の第二本科で学びました。掘削や生コンクリート打ちなど、昼間に現場でやっていることを夜に座学で体系的に学ぶことができ、土木についての理解がどんどん深まっていくのが楽しかったことを覚えています。普通科の高校出身の私にとっては何もかもが新鮮で、多彩な材料や幅広い工種について先生方に丁寧に教えていただき、土木の奥深さに魅了されました。また、それまでは建設現場で働く人たちを「かっこいいな」と思う程度でしたが、修成で学び始めてからは土木がいかに社会に貢献しているかを実感しましたね。さらに、第二本科では家業を継ぐために学んでいる仲間も多かったので、その姿に刺激を受け、自分もいつかは会社をやってみたいと思うようにもなっていました。そして修成を卒業した後、もともと海外志向が強かった父にすすめられて国際協力事業団 青年海外協力隊(現 独立行政法人国際協力機構 青年海外協力隊)に応募し、アフリカのケニア共和国にあるビクトリア湖周辺開発公社で土木施工隊員として2年間従事しました。発展途上国の人々の役に立ちたいという思いで仕事に取り組むと同時に、自分が日本でどれほど恵まれた環境にいるかや、平和な暮らしの尊さに気づかされました。その環境で自分は精一杯努力しなければならない、そしていつかまた土木を通して発展途上国の人々の役に立ちたいと決意しました。こうした使命感の土台をつくってくれたのは、間違いなく修成での充実した学びだといえるでしょう。

ケニアから帰国した後は建設コンサルタント会社に就職し、同時に大阪工業大学の第二部(夜間部)工学部土木工学科に入学。修成時代と同じく昼間働いて夜に学び、さらに専門性を高めていきました。この会社では主に下水道設計に携わり、その後転職した会社では河川設計を中心に行いました。その中で特に印象に残っているのは、和歌山県と三重県の県境を流れる熊野川の河口部にある、1.2kmの防潮堤を改良するための設計です。防潮堤は緻密な計算のもとに設計されるもので、高さや幅が重要です。台風の高潮が防潮堤にどのように浸透していくのか、大地震の際の耐震性、さらに過去の洪水の履歴も徹底的に調べ、3Dアニメーションによる景観のシミュレーションなども実施。盛りだくさんの内容を踏まえて設計を仕上げられた時は大きな達成感がありましたし、土木は地域の人々の命や財産を守る仕事だと改めて実感しました。

近年は建設業界でもデジタル化が急速に進み、当社もそれに対応しようと取り組んでいるところです。今後は会社を長く継続させ、今より社会に貢献できる会社となっていきたいですね。そのために私の後継となる技術者を育てることにも力を入れたいですし、全従業員に物心両面の幸せと仕事のやりがいを感じられるような会社づくりを目標にしていきたいと考えています。また、いつか再び発展途上国に行き、現地の人々の役に立つような仕事ができたらいいですね。
近年の働き方改革で、建設業界でも働く環境はよりよくなりつつあります。それはとてもいいことなのですが、働くこと自体は決して苦行ではありません。若いみなさんにも、働くことに、仕事に、生きがいを感じてほしいというのが私の願いです。海外では建設業界の認知度が高く、土木工学は市民工学といわれています。社会生活に欠かせないインフラ整備を担う存在なので、日本でももっと注目されるべき業界だと思います。そんな誇り高い仕事を集中して学べる修成の環境は貴重です。少しでも建設業界に興味がある方は、ぜひ修成の門を叩いてみてください。

Works 01 砂防えん堤詳細設計

降雨や地震などに伴って発生する土石流に対し、住民の生命や財産を守ることを目的につくられた砂防えん堤。現地調査や地質調査に基づいて算出した流出土砂量や流木量を確保できる設計となっている。

Works 02 歩道詳細設計

港町・神戸にある中突堤歩道。多くの人でにぎわう観光地にふさわしい景観をと考え、緑地や照明デザイン、照明灯の間隔などを工夫して設計した。日没前、照明が灯り始める時間帯が特に美しい。

Works 03 河川詳細設計

洪水による河川の氾濫を防止する目的で河床を掘り下げ、護岸を再構築するための測量、調査及び設計を担当。また、河川改修に伴い、地域の農業で使用している取水施設の再構築設計も行った。

Profile 株式会社関西エンジニヤリング 
土橋 傑
 技術士(建設部門・上下水道部門)

1991年、修成建設専門学校 第二本科 土木工学科を卒業。1992年より2年間、国際協力事業団 青年海外協力隊(現 独立行政法人国際協力機構(JICA) 青年海外協力隊)としてケニアへ赴任。帰国後、大阪工業大学で学び、建設コンサルタント会社2社を経て2007年に父が営む(株)関西エンジニヤリングへ。2019年より代表取締役。技術士(建設部門・上下水道部門)、一級土木施工管理技士、測量士。

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