Creator's File 逆瀬川はうじんぐ株式会社 上杉登美子の仕事

逆瀬川はうじんぐ株式会社 上杉登美子の仕事
逆瀬川はうじんぐ株式会社 上杉登美子

1991年、修成建設専門学校建築学科夜間部(第2本科)を卒業後、尼崎市内の設計事務所で設計士として5年間勤務。その後、派遣社員として大手ハウスメーカーの設計部での勤務を経て、逆瀬川住研株式会社に建築事務として入社。2008年、同社建築部が「逆瀬川はうじんぐ株式会社」として独立した際に移籍。新築注文住宅やリフォームの施工管理を行い、マネージャーも務める。

もともと実家が鉄工所を営んでいたことや、両親が自宅のリフォームが好きだったこともあり、幼い頃からものづくりを身近に感じる環境で育ちました。高校卒業後、父に勧められた設計事務所で働き始めたのと同時に、せっかくなら専門的に勉強しようと修成の夜間部に入学しました。夜間部は学生の年齢層が幅広く、クラス最年少が高校卒業直後の私、最年長は40代の男性。ほとんどが現場で働いている人で、現場の話をたくさん聞かせてもらったのはもちろん、言葉遣いやものごとを要領よくこなす感覚も身につきました。資格を取るための知識だけでなく、人生経験豊富な大人に囲まれていたからこその学びがあり、社会人としても成長できた2年間でした。
修成を卒業してからは2社で設計を経験。その後、現在勤務している会社の前身の会社に、現場とオフィスの橋渡しをする建築事務として入社しました。その業務の中、出かけた現場で材料を拾ったり寸法を測ったりし始めたのが現場に出るようになったきっかけ。当時は現場に女性はほとんどおらず、入りづらく厳しい場所という先入観がありましたが、実は優しい方も多いと感じ、より現場に通うように。オフィスでじっとしているのが苦手なタイプなので、気づいたら施工管理として現場にどっぷり浸かっていました(笑)。

現在は、新築の注文住宅やリフォームにおいて、お客様との仕様の打ち合わせ・提案と現場管理を行っています。着工前は内装や設備関係の提案・作業を行い、着工後は1〜2週間に1度お客様と打ち合わせし、そこで決まったことを職人さんに伝えるという流れです。お客様にとっては一生に一度の買い物なので、できるだけ距離感を縮め、身内の家を建てるつもりで接することを心がけています。例えば、入念に打ち合わせを行っていても、家ができていくにつれて気になる箇所は出てくるもの。部屋の明るさ一つをとっても、私たちとお客様との感じ方は異なるため、現場での打ち合わせで「もっと明るくなりませんか」とリクエストされることも。その際は職人さんの協力を得てできる限り対応します。工事が進むほど変更が難しいため、気づいたときに遠慮なく連絡をいただける関係を築いておくことは本当に大切です。今回建築しているこのお宅も、お客様のこだわりが詰まっています。南向きの大きな窓で最大限に明るさを確保し、3人のお子さんが走り回れるような広いリビングと、それをしっかり見守れるようキッチンを配置。家族が多くてもスムーズに使える大きな洗面スペースも特徴です。ぜひ新生活を楽しんでいただきたいですね。
やりがいを感じる瞬間は、お客様の要望にぴったり合ったものが提案できて喜んでいただけたとき。「想像通りのものが出てきた!」というのは表情でわかります。最近は完成イメージの画像などをもって来られるお客様も多くなりましたが、ときには口頭で要望を伝えられることもあります。それを後日スケッチなどにしてご提案した際、「話だけでこんなにぴったりのものが出てくるなんて!」と喜ばれることがあり、そんなときはこっそり心の中で「プロですから!」と充実感を味わっています(笑)。
当社ではお庭などの外構工事を残して引き渡すため、その最中にも週に1回ほどのペースで訪問し、実際に住み始めて気になることを伺うほか、すべての工事が終了すれば1年目、2年目、10年目の点検も行います。その間もメンテナンスをしたり、近くを通った際に伺ったりすることもあり、その際に「ここの空間がいい」と笑顔で話してくれるお客様がたくさん。生活を楽しまれている姿を見ると、本当にこの仕事をやっていてよかったと実感します。
打ち合わせの際、いろいろと迷われているお客様に「どれが正解ですか?」と聞かれることもよくありますが、住まいに決まった正解はありません。そこに住まわれるお客様が快適に楽しめてくつろげることこそが正解。注文住宅を手がけているため、今まで経験のないような要望が出てくることもあり、私も職人さんたちもそれを叶えようと取り組むことで視野が広がったり、気づきを与えられたりするのがおもしろいところです。これまでにも実験用の装置を据え付けた、ヨーロッパの古びた洋館風のお家を実現するために特注のタイルを焼いてもらったり…建ててきた1つひとつのお宅すべてが印象に残っています。
また、最近は女性の技術者が増えており、実際に何度も現場に来てもらっている方もいます。目を見張るような技術を持っている方や現場をキレイに整頓してくれる方など特徴は人それぞれですが、現場に女性ならではの視点が入ることで、より実用性の高い家づくりができると感じます。

私は「その日がいちばんいい自分であること」を積み重ねていくことをモットーにしています。人間誰しも1日ずつ年をとっていくので、1日1日を無駄にせず目の前の仕事に常にベストな自分で臨みたいですね。また、建設の仕事は1人ではできません。この業界を志すみなさんに忘れないでほしいのは、この仕事はお客様や職人さん、現場の近隣の方々など、人とのつながりの上に成り立っているものであるということ。スキルアップも大切ですが、まずは相手の立場に立ち、気遣いができる人をめざしてください。それと、仕事と私生活の緩急も大切です。仕事以外に好きなことや息抜きできることをもち、何でも話せる友人をつくって、メリハリをつけながら仕事を楽しんでほしいと思います。

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