Creator's File 奥村組土木興業株式会社 坂野峻介の仕事

奥村組土木興業株式会社 坂野峻介
奥村組土木興業株式会社 坂野峻介 SHUNSUKE SAKANO

2005年、修成建設専門学校土木工学科を卒業後、同年4月福井工業大学に編入学。2007年同大学卒業後、奥村組土木興業株式会社に入社。以来、施工管理者としてシールド工事や道路工事を手がけ、新名神高速道路事業にも従事。現在は現場代理人として大阪広域水道企業団発注のシールド工事に携わっている。1級土木施工管理技士。

現在、現場代理人として、大阪広域水道企業団発注のシールド工事を行っています。大阪広域水道企業団の工業用水施設は昭和37年の給水開始以来、50年以上が経過。管路施設の経年劣化が進んでいます。そのため、既設の管に万一事故があった場合や、更新時に必要となる代替能力を確保し、地震などの災害時に対応するためのバックアップ機能も併せ持つバイパス管を新設しています。
私はこれまでにもシールド工事や道路工事を14件ほど経験しました。入社5年目くらいまでは1年未満の比較的工期の短い工事を担当することが多く、段階を踏んで、現在のような大規模な現場に携わるようになりました。
土木の仕事は生活に不可欠なライフラインに関わるという大きなやりがいがあります。手がけたものが半永久的に形に残り、地図に記録され、後世に受け継がれる。日本の将来の基盤を支える役割を担っている実感がありますね。また、今後は新設よりも維持管理の時代。高度成長期につくられたインフラの老朽化対策や大規模改修が増えるため、必ず必要とされる仕事です。

これまでの仕事で特に印象的だったのは、新名神高速道路事業です。工期が3年半という長丁場で、山奥の森林を開拓して高速道路の下部工(基礎と橋脚部分)を行うというもの。森林を伐採する範囲を選定してテープを貼る作業から始まり、当初は「こんなところにどうやって道路をつくるんだ?」と思うばかり。設計図には構造物までアプローチする工事用道路などの詳細は記載されていませんでした。そのため、構造物に着手するまでの工程を自分たちで進めなければならず、現場で判断して計画を立て、発注者に提案。こうした基礎をつくるまでの環境を整えるのが一番大変で、今回のように何もないところからの着手は、特に多くの工程を必要とします。工事用道路や仮桟橋ができて周りの環境が整備され、構造物の施工ができるようになったとき、ようやく完成のイメージができました。私たちが手がけたのは、高さ平均30m級の橋脚19基。一番高いもので地上から50mもの高さがある巨大な構造物です。自ら施工計画を立案して実行でき、私にとって一番成長を実感した現場となりました。
この工事はもともと工期が遅れており、通常は下部工がすべて完了してから着手する上部工(橋桁部分。別会社が施工)を、下部工ができた箇所から、その都度開始して工期を短縮しなければならないほど、道路開通の日程が迫っていました。下部工だけで、繁忙期には1日総勢100人ほどの作業員が現場に入ったことも。そういったたくさんの人の手でつくり上げたものとして、一生心に残り続けるでしょう。最終の完成検査では発注者からの指摘事項はゼロで、竣工の瞬間は、言葉にならない感動と達成感がありました。

私は学生時代にも、みんなでものづくりをした経験があります。クラスメートと数日間の共同生活を送りながらものづくりに挑戦した屋外講習は、今振り返っても貴重な経験。完成時の充実感もよく覚えています。また、当時は「建設機械」という授業で車両系建設機械や移動式クレーン、玉掛けなどの技能講習を受講したのですが、今でもその資格が役立っていますね。
社会人になってからも、周囲との連携を大切にして仕事に取り組めているのは、そういった修成での経験のおかげだと思います。これまで携わった案件の中には、同区間に私たち奥村組土木興業と大手ゼネコン3社が関わったものもあり、他社に挟まれるという非常に珍しいケースもありました。その際には、電話やメールなどで連絡を密にし、隣り合う区間の会社とは車両の出入りなど作業が制限される時間帯を確認し合うほか、近くにいるときには直接出向いて話すことも。こうした大変さやコミュニケーションの大切さを味わうたびに、修成での学生生活をよく思い出します。

建設業界は、需要が高まる一方で人手不足が深刻です。そこで、少しでも多くの人材を獲得し、このやりがいある仕事を継承していくために、週休2日制や残業時間の削減といった働き方改革が進んでいます。また、女性技術者を積極的に採用する企業も増えてきました。奥村組土木興業でも、産休・育休制度などを整備しながら、徐々に女性技術者の採用を進めています。私が業界に貢献できるのは、学校への訪問などを通して、人事だけでは伝えきれない現場の声を届けること。私自身の言葉でこの仕事の魅力を伝え、社会資本の担い手である若い技術者を確保し、育てていきたいですね。
学生のみなさんには、「自分は何がしたいのか」をまず一番大切に考えてほしいです。その一方で、先入観で物事を決めず、まず飛び込んで、自分で考えて、挑戦してみてもいいのではないでしょうか。建設業界であれば、指示されるがままに動くのではなく、自分で考えて、伝えて、ものづくりをやってみること。先日も会社の若手社員と集まる機会があり、年齢や立場を超えて意見を伝え合いました。今の若い人たちは、自分の考えを発信できる人が多いと思います。私の若い頃は上下関係が厳しく、考えていても口にはしづらかったものですが、今は時代の空気がずいぶん変わっています。上の世代も、若い人の意見や考えを柔軟に取り入れるようになってきました。自分がやりたいと思うことに、思い切って挑戦してください。

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