Creator's File 株式会社司建築設計事務所 関 朋子の仕事

株式会社司建築設計事務所 関 朋子 Tomoko Seki

1985年第一本科建築工学科(現:建築学科)卒業、設計事務所を経て現在の株式会社司建築設計事務所へ。数多くの福祉施設や特別養護老人ホーム、保育園など大型施設の企画・設計・監理などすべてを手がける。
一級建築士、インテリアプランナー。

幼い頃から身近だった建築。自身も自然にこの道へ。

曽祖父が大工をしており、祖父も父も工務店をしていたので、建築は幼い頃から身近な存在でした。まさか自分も同じようなことをするとは思っていませんでしたが、進路を決める時期にたまたま見た雑誌で、大手ゼネコンでキッチンデザイナーがいる女性ばかりの部署があるという話を読み、こんなことをしてみたいなと思ったのがきっかけです。父から、この道に進むなら資格がいるのではないかと言われ、修成に入学しました。修成を卒業してから講師で来ていた先生の設計事務所にお世話になり、1年働いて現在の事務所に入りました。私が修成に通っていた当時はまだまだ女性は少なく、同じクラスの4人でいつも一緒に行動していました。その関係は今でもまだ続いていて、「年に一度は会わないと年が越せないね」と言い合うほど。当時お世話になっていた先生方とまだ連絡を取り合うこともありますし、とてもいい出会いを得た場所だったと思います。 お客さまの意見をまとめ、自らのノウハウも生かすやりがい。


企画から竣工まで手がけ、ドアノブ1つまでご提案。

私が勤務している事務所では、お客さまは多くが社会福祉法人や医療法人で、2000~3000㎡の大型施設を企画から設計・監理、竣工まですべての工程を4~5年かけて行っています。現在はある保育園の図面を描いているところで、常に3つか4つの案件を並行して進めています。下請けの仕事はなく、100%お客さまと直接やり取りしているため、ドアノブ1つ、クロス1枚まで考えてご提案します。これは少人数の事務所だからこそのメリットですね。関わった仕事がその後どうなったか知らないということは1つもありません。1つの法人で何軒もの施設に携われることもあり、もう20年近く福祉施設や保育園、特別養護老人ホーム、最近ではサービス付き高齢者向け住宅などを手がけています。いかにお客さまの意見をまとめて形にするかということにこだわっていますが、言われたとおりにやっていればいいというものでもありません。私も経験上培ってきたノウハウや知識がありますので、それをもとに細かいコミュニケーションを積み重ねていきます。お客さまから「どうしたらいい?」と聞かれることもありますし、「関さんにお任せするよ」と言っていただくこともあり、企画から竣工まですべてを手がけられ、信頼していただけることは本当に幸せです。 つくったものが残る喜びと責任を感じながら、常に丁寧な仕事を。


一つずつ丁寧な仕事を積み重ね妥協のない建物をつくること。

これまで、近隣住民の方々の建設反対にあった物件もありました。そういうときは住民の皆さんに説明会を開いて少しずつ理解を得るようにし、役所との調整も行います。お客さまと直接やり取りするというのは、そういった関連するすべてを含めてのことです。その物件も説明と調整を重ね、結局はきちんと竣工できました。建築物って、いろんな人のちょっとした努力が重なって建つんですよね。毎回いろいろあって、「もうやめてやる!」と思うこともしょっちゅうありますが、引き渡しのときにはスッキリ忘れてうれしくなってしまうんですよ(笑)。不思議と「なんかいろいろあったけど、よかったな」と思えてしまうんです。その喜びがあるから、この仕事を続けていけるのかもしれないですね。仕事をするうえで常に心がけているのは、竣工した後に寄りたくならないような建物にはしないということです。つくったものが残るというやりがいや喜びがあるということは、逆に妥協して適当な仕事をすれば、適当なものがそこに一生残ってしまうということでもあります。そうならないためにも、目の前のことに一つずつ丁寧に取り組んでいくしかありません。 竣工のときに毎回思うこと。「いろいろあったけど、よかった」。


性別の違いにとらわれずじっくりがんばることが大切。

建設業界でも女性の活躍が注目されてきていますが、私は女性であることを気にしないことにしています。若い頃は「女性らしい色使い、設計」といわれることがすごくいやな時期がありましたが、今では考え方も変わり、「さすが女性らしい色使いだね」と言われるのは素直にうれしいですね。どうがんばったって男性にはなれないですし、その逆もそうなのですから。特に最近は女性の設計士や現場監督も増えてきて、以前ほど現場に女性がいることが珍しい時代ではなくなってきました。もちろん体力勝負になると差はありますが、今後もどんどん性別の壁はなくなっていくのではないでしょうか。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることが決まり、東日本大震災からの復興事業もあるため、この先、建設業界全体としては忙しくなるでしょう。でも単に選択肢の一つとして「就職先がありそうだから」というような理由で入って務まるような職業ではないと思います。ただ本当に建築やものづくりが好きな人にはできるだけ多く入ってきてもらいたいし、一つの場所に腰をすえて、じっくりがんばってほしいと思います。この業界は独立志向が強い人も多いですが、一つの案件を自分一人でできるようになるまではだいたい5、6年はかかります。その間に自分の強みや得意分野を見つけてほしいし、多くの人からいろいろなことを学んでほしい。自分の可能性を見出す前に事務所を変わったり独立したりして動いてしまう人が多いように感じるので、この業界をめざす若い方には「急がずにじっくり」がんばっていただきたいですね。

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