第11回修成インテリアスケッチコンテスト

「ウイークエンド・ハウスのインテリア」審査講評

「未来を生きるみなさんへ」

今年も各地から多くの力作をご応募いただきましたことに、まずはお礼申し上げます。今年度のテーマは「ウイークエンド・ハウスのインテリア」でした。

応募要項にも記しましたが近年、複数の生活拠点を持つ暮らしかたを行なう人たちが徐々に増加しています。例えば家族との日常は都会や近郊のベッドタウンで過ごし、週末には郊外で過ごす、反対に普段は郊外で生活し、週末には都市を満喫する、といったライフスタイルを志向する人たちです。

背景にはネットの発達とともに職場を離れて個別のタイムバランスで仕事ができるワークシェアやテレワークのような、いわゆる働きかたの改革に加えて、人口減少への方策として空き家再生や地域ネットワークの再構築が徐々に浸透してきたことなど、従来の組織や社会に帰属しながら、個の志向に基づいた幸福の追求を同時に実現する環境が、一定の社会的な認知を得るようになってきたことが挙げられるでしょう。

テーマとした「ウイークエンド・ハウス」は「ハウス=住居」ですから、基本的にインテリアはパブリック(公共)なものではなく極めてプライベート(私的)なものです。したがってそこで暮らす個人の好みや思想が色濃く反映されたものであり、また社会の変化やトレンドとの相関関係にあるものが見られるはず、そしてこれらが組織や社会と結びついた「日常」生活の場ではなく「ウイークエンド」であることは、この関係を純化し増幅するものになると考えました。今回みなさんが提案された力作の数々からは、このような出題意図をしっかりと読み解いて考察された様子が伺えるものが多くありました。

ところで統計によると2019年の現在、1億2千万人を超える日本の人口は徐々に減少傾向にあり、反面、世帯数は5340万世帯で急速な増加傾向にあります。人口比でいえば一世帯当たり2.38人です。この数字が意味することは何か?これまで「標準的家族」と考えられてきた両親+子供2人はすでに半ば幻想化し、この国では「カップル」「ふたり」「ひとり」が家族の主流であるという事実です。未来に建築やインテリアのプロとして生きるみなさんは、この事実を眼前に「家族」そして「住居」を考えなければいけないと思います。

応募案のなかにはこういった「ひとり=ワタシ」「ふたり」「カップル」を主語にとらえたものも多く、このことは私たちが暮らす日本の現在地点を明確に表現していると思いました。

さらに、IoTの進化は個人の志向やデザインをVRやパーソナルファブリケーションという手段で後押しし、「ワタシが好きなもの」だけで構成されたインテリアを妥協なく実現する時代が来ています。応募案には時代を敏感に察知してオーガニックでナチュラルな表現にまとめ上げているものもあり、IoTネイティブ世代であるみなさんがテックを未来の特別なものではなく、あたりまえの日常として受容している姿が感じられました。

デザインやアートは、カタチや場を「つくる」ことだけではありません。社会と関わりながら社会をよく観察して時代を微分し、カタチや場に「まとめる」こともまた、クリエイションだと思います。そこには審美眼やセンスだけではなく、今これからを優しい眼差しで見つめ、より良くして行こうという意思が欠かせません。

これから未来を生きるみなさんには将来、社会との関わりのなかでよく観察し、良きユーザーでありながら良きクリエイターであることを目指して欲しいと思います。

未来を考えるのはとても難しいことです。ともすれば過去や現在を置き去りにした、独りよがりな表現に陥ってしまいます。今回の応募作では多くの「こうかも?」というアイデアが寄せられました。過去と現在に寄りそった、優しい視線の未来が今回もたくさんあったことは、出題者としてとても嬉しく思っています。

最後に再び、多くの提案を寄せていただいた高校生のみなさんにお礼申し上げるとともに、今回も審査にご協力いただき、すてきな講評を賜りました日本建築士事務所協会連合会ならびに大阪府建築士事務所協会の皆様に厚く感謝申し上げます。ありがとうございました。

修成建設専門学校 鍵谷 啓太

※敬称略

金賞

たまごどーむ

島原 佳那

京都市立京都工学院高等学校

半球体ドーム建築が組み合わされた構造はイヌイットのイグルーやモンゴルのゲルを連想させる、いわば土着的な住居の形式。しかし内部は料理、読書やゲームなど「ひとりでやりたいこと」で満たされている。単純な形をデザインすることはそれなりに勇気のいることだが、この案ではそれが強さとなって表れている。デザインし表現することの楽しさや初期衝動だけではなく、ゾーニングやプランなども緻密に考察されており、本年度の金賞に選定しました。おめでとうございます。


銀賞

SEA SIDE HOUSE

南雲 風花

埼玉県立川越工業高等学校

都市の喧騒や窮屈さを離れて自然のなかで家族の関係を回復する、という案は今回多く寄せられたが、なかで最も丁寧に考察し表現されていた。家族・空間・自然に対しての優しい眼差しが伝わるプレゼンテーションの分かりやすさは、必ず今後の作者の強みになると感じた。

自分の空間 家族の空間の家

関 菜々美

長野県長野工業高等学校

老子の言に「無用の用」という一節がある。
「有の以って利を為すは、無の以って用を為せばなり」
無の存在こそが世界に意味を与えるという意味なのだが、無=空間と考えるとき、そこに空間が有ること、モノが無いということは、なんて豊かなことなのだろうと感じさせる案。
コンセプトの幅や深度は最もあったと感じている。


一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会 会長賞

水と星空

島村 貴彦

高知県立安芸桜ケ丘高等学校

まずパッと見た時、美しい。これはプレゼンテーションの肝だ。青を基調にした色使い、縦横の線と斜めの線の構成も良い。星空とそれを映す水だけ、喧騒の世間から隔絶した空間は、たしかにリラクゼーションというに相応しいだろう。だったらもう一歩踏み込んで、TV・PC・Wi-Fi・スマホ等、外界と通じるものが一切ないという設定を付けたら迫力が増すはずだ。そういう“物語”を考えるのも建築の妙味、設計の要諦だから。


一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 会長賞

自然と人が共存する家

橋本 紗也花

静岡県立浜松工業高等学校

ボルダリングという一点突破のエレメントを設定したのが良い。インテリアの一要素でしかない“壁”が楽しみの源になり、その色使いの豊かさがまたインテリアとしての面白さを増幅する。たしかにボルダリングという要素を持ち込むことは空間に活気を与えるだろう。タイトルや建物の形状、構成にもう一工夫欲しかったが、近い将来、壁にカラフルな突起が施された家が住宅街の景色を変えるかもしれない。


佳作

ハウスの巡る休日

安井 千尋

兵庫県立豊岡総合高等学校

住宅が観覧車に載せられて様々な場所を巡る、いってみればアイデア一発勝負!という案ではあるが、もたらすオドロキが様々な矛盾点を突き抜けるだけのパワーを持っている。

開放的な空間

谷口 健心

静岡県立浜松工業高等学校

縦使いの紙面いっぱいに空間が表現され、そのなかには様々な仕掛けが張りめぐらされている。この部屋のなかに身を置いたら楽しいだろうなと純粋に思わせられる。

2種類のくつろぎ

吉田 ひかり

静岡県立科学技術高等学校

週末に都会に出て美味しいモノや話題のモノ、ファッションを楽しみつくすための住居。都市を自然と見立てる感性を表現し、ひとつの「上京物語」としてまとめ上げた手腕は見事。