第13回 修成建築設計競技

「ツナグ」建築審査講評

今なお不安定な社会状況が続く中、今年も全国から寄せられた作品の数は110点を超え年々増えていく応募数に改めて高校生の皆様のパワーに感嘆し、ご指導いただいた先生方に心より感謝申し上げます。
本年度の課題は、新型コロナウィルスと人類との戦いに、長い時間が経過してきた中で失われたものの数は、計り知れない傍ら、その状況であるがゆえに、進化した「考え方」や「スタイル」を生み出してきていることもきっとあるはずとして、建築におけるそれら「新しい様式」のひとつとして、何かをつなぎ合わせることにより、大切なものを失うことがないような工夫を問うものでした。かつてはつながっていたが今は離れてしまったもの、そもそもつながっていなかったもの、などに対して再び、または新たに、「つなぐ」という役割を、建築がどのように果たせるかを、「考える」という作業の中には、いま個人個人が抱えている問題と正面から向き合っていかねばなりません。ともすれば逃げ出したい、目を向けたくないこともあるかと思いますが、山のような応募作品から高校生の皆様の、大いなる希望と力強さを感じることができ、改めて逆境に立たされた今だからこそ、忘れかけていたつながりを思い起こすことができた、そんな内容であったと思います。

提出された作品を振り返ってみますと、人やもの、地域、空間などの、目に見えるものだけではなく、時間や世代、価値観や人付き合いなど、直接形を成していないものも掘り起こし、それらを多角的な視点で「ツナグ」ことを試みた提案が、数多く見られました。
また、そのつなぎ方(手法)にも趣向を凝らされており、物語性を持たせたものや、使用材料の地産地消を訴えたもの、空間構成のコンセプト建てがしっかりと練られた上に考えられたもの、それらは見るものを納得させるに十分なものでありました。
また、実際にフィールド調査を実行し、その調査内容をグラフ化した上で、大きな社会問題という問いに対する建築的な側面からの答えの出し方が、論理的にまとめられた作品も、数点見受けられました。
これらは、高校生の感性や努力はもちろんのこと、彼らに対して的確な道標を示して導いてくださる先生方との、連携という「つながり」も感じ取ることができました。

今回の設計競技を通じ、普段は表立った形を見せなくとも、しっかりと皆様方の心の中にある想い(本校では、相手の心を思いやると読んでいます)を感じ取ることができました。
私たち修成は、先代と次世代の皆様方をしっかり結び付けていく役割を果たしていくことを約束します。
結びに当たり、混沌とした出口の見えないコロナ禍において、各高等学校さまを取り巻く環境が大変複雑な状態にもかかわりませず、数多くの高校生をご指導いただきました先生方、さらには専門学校の人づくり教育にご賛同いただき審査にご協力を賜りました一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会、一般社団法人 大阪府建築士事務所協会の皆様に厚く感謝の意を表します。誠にありがとうございました。

修成建設専門学校 見邨 佳朗

※敬称略

最優秀賞


町のおもちゃ箱 バス停が××に変わります

西田 涼乃

三重県立伊勢工業高等学校

休耕地の活用という社会問題のひとつに対して、フィールドワークにより現状を捉え、それに建築的アイデアで答えるという論理的な構成になっている。人と人それは老若、人と風それは自然の摂理、お互いのつながりを建築物間の距離や内部外部空間の活用に、視覚的工夫を加え、遊び心のあるデザインで表現されている。ガーデンデザインも合わせた表現になるとなお素晴らしいものになったであろう。


優秀賞


移動する美術館

稲垣 帆花

三重県立四日市工業高等学校

森、そして森から切り出された材料で作られた住宅、それらはいずれも短いサイクルで形を無くしていく。土着しないツリーハウスは、美術館として森の中を移動し、森林という形態を保つために必要な行為(間伐)を資源化することにより成り立っている。それは、その他の地域資源である特産物とともに、世代・地域・産業のつながりに大きく寄与していることに着眼された点を評価した。



バスで繋がる世界と地域の輪

山内 呂時

神戸市立科学技術高等学校

観光客と地域とをつなぐ際に、欠かすことができない交通機関における建築の役割として、バス停に着目した作品である。バスを待つ人と地域の人とのコミュニケーションの図り方に変化を持たせるべく、地元店舗の日替わり出店や、緩やかな時間の過ごし方、書き込み可能な壁面パネルなど、多彩なアイデアが表現されているところに趣がある。


一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会 会長賞


あたたかい故郷 地域と人をツナグ広場

諌山 葉音

大分県立日田林工高等学校

防災のための土木工事がその地固有の情緒を奪ってしまうというジレンマに対する、精一杯の建築的回答と言える。独特の街並みが味わい深かった昔と、安全に配慮して新生する未来、この二つを『つなぐ』試みは、今後各地共通のテーマになってくるだろう。その意味で、これは、「地域と人をつなぐ」と同時に「過去の情緒と未来の安全」をつなぐ提案と言えよう。色使いの巧みさを含め、表現力の高さも目を引いた。


一般社団法人 大阪府建築士事務所協会 会長賞


グリーンロード 家と家の間のすきま利用

久保 裕哉

三重県立伊勢工業高等学校

「家と家の間のすき間にある趣味のためのグリーンロード」は、昔の路地空間に似ている。縁台将棋や軒先花壇はかつてどこにでも見られたが、それを今の都市に計画的に組み込むとこうなるのだろう。グリーンロード全体が一人暮らしの生活者の回廊のように使われる。それが実現可能かどうかはさておき、今だからこそ見直してみたい『繋ぎの空間』だ。図像表現は十分闊達だが文章力をもう少し磨きたい。


佳作


おしゃべりな図書室
ーたてとよこで織りなすつながりー

藤巻 杏那

東京工業大学附属科学技術高等学校

読書とは、目で文字を追うことだけではない。文字を声にすることで、一人で本を楽しむのではなく、誰かと誰かが、時間や内容を共有することができる。織られた糸から創造された形は空間を立体的に使用し、見た目の変化に加え、声に配慮されている。それは、縦糸になぞった本が、コミュニケーションという横糸との絡み合いとしてうまく表現され、利用する人に世代間のつながりを感じさせるであろうと評価された。


「ごはんできたよ」が聞こえる

石井 憲志

広島県立広島工業高等学校

家族をいつも元気づけてくれる「ごはん」。その匂いや音という目に見えないものが、家の中央に位置された通り道という空間を経て、各自にたどり着く。家族間のプライバシーを保ちながら、無くてはならないものでしっかりとつながれているように表現されている。また、その暮らしぶりが向こう三軒両隣と、価値観を共有する場合、昔ながらの近所づきあいが広がっていくような住戸配置に工夫が施されている。


つなぐ図書館

梶田 滉航

静岡県立浜松工業高等学校

あえて利用頻度の少ない場所に、自然が持つおおらかな力と、本が有する魅力によって、人と人、本と人を出会わせ、つなげようと挑戦した作品である。風や光、水や木陰を建物の内外において、自由な姿勢で感じながら本に親しむことができる。普段人の寄りつきが少ない場所にこのスペースが出現すると、無の空間にワクワク感や期待感、想像力が生まれて来るのではないか。